『 葬送のフリーレン』をおすすめしたい!
イントロダクション
『帰ったら仕事を探さないとな……』
『もうそんなこと考えているんだ』
『大事なことさ。魔王を倒したからといって終わりじゃない。この先の人生のほうが長いんだ』
勇者一行「勇者、戦士、僧侶、魔法使い」が魔王を打ち倒したことにより、平和な時代が訪れます。
10年続いた冒険が終わり、街中で50年に一度の流星群を見ながら、勇者一行は解散しました。
『街中だと見えにくいね』
『人が感動しているんだ。空気を読みたまえ』
『じゃあ次、50年後。もっと綺麗に見える場所を知ってるから、案内するよ』
そういったのはエルフの魔法使い『フリーレン』です。
長命種のエルフにとって、50年も100年も些細なものでした。
王都で勇者一行と別れた後、50年近く魔法収集の旅を続けていたフリーレンは、約束通りに戻ってきました。
50年の月日が経っても姿が変わらなかったフリーレンに対して、仲間たちはすっかり歳をとっています。
『で、よく見える場所ってどこなんだ?』
『ここから一週間ぐらい歩いたところ』
『老人を酷使しおって』
勇者一行は旅をしました。焚き火を囲み、魔物と対峙して、綺麗な流星群を見上げます。
とても楽しい、最後の冒険でした。
鐘の音が聞こえる中、勇者の葬儀が行われています。多くの人が涙ぐんでいますが、フリーレンの表情は変わりません。
『あの子、ヒンメル様の仲間なんだって? 悲しい顔一つしないなんて、薄情だね』
『だって私、この人の事、何も知らないし…』
人間の寿命は短いと知っていました、なんでもっと知ろうと思わなかったのか。
たった10年一緒に旅をしただけなのに。そう口にするフリーレンの瞳からは、涙がこぼれていました。
葬儀が終わった後も、フリーレンは魔法収集の旅を続けます。以前と変わったことがあるとすれば、もっと人間を知ろうと思ったことです。
エルフの人生の百分の一にも満たない、たった10年の旅は、フリーレンに大きな影響を与えていました。
残った者たちが紡ぐ物語。冒険の終わりから始まる英雄たちの後日談ファンタジー『葬送のフリーレン』をおすすめしようと記事にしました。
原作・原案『 山田鐘人(以下敬略称)』。作画『アベツカサ』。ジャンルは『ファンタジー』。
2023年11月現在、 少年サンデーコミックスにて既刊11巻まで発売中。
2023年10月時点で単行本の累計発行部数は1100万部。
第14回マンガ大賞、第25回手塚治虫文化賞新生賞受賞作。マンガ大賞2021大賞。全国書店員が選んだおすすめコミック2021第2位。第45~46回講談社漫画賞少年部門最終候補。楽天Kobo電子書籍Award2023世界に届けたい! 一押しコミック部門 第1位など、様々な漫画賞やランキングに名が挙がっています。
2023年9月から、連続2クールでテレビアニメ版が放送開始されました。制作は『ギャラクシーエンジェル』『カードキャプターさくら』などを手掛けた『マッドハウス』。監督は『ぼっち・ざ・ろっく!』も担当した『斎藤圭一郎』。シリーズ構成・脚本は『ワンパンマン』『ブギーポップは笑わない』を担当した『鈴木智尋』。
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本作の魅力として、
『よぬこ・有野晋哉』は、『勇者のパーティーが世界を平和にした50年後が舞台で、その功労者を世界が忘れかけてるってことを長生きの魔法使いが知ってしまった入り口が好きです。フリーレンが人間の寿命と儚さに気づく、感情の成長が何より良いですね。ぜひ、ゲーム好きに読んで欲しいです。それもロープレのゲーム性より、物語部分のほうが好きな人は特にハマる』
『声優・豊崎愛生』は、『静かで優しい空気感と、すこしの後悔や寂しさを纏って進んでいく世界観にぐんぐん引き込まれ、気づけば最新話まで一気に読み進めていました。フリーレンの寿命は人間と比べて遥かに長く、ともに闘った仲間達の死後も、自分の時間を生きています。人との時間に対する価値観の違いの中で、大切なことをたくさん感じとっていくフリーレン。彼女の視点だけで物語を読んでいると忘れてしまいそうな時間の流れを、周囲の人間が思い出させてくれるのも魅力のひとつと思います』
とコメントしています。
あらすじ(序盤のネタバレを含む)
勇者の死から28年後。魔法収集の旅を続けていたフリーレンは、かつての仲間『戦士』から探し物の手伝いを頼まれます。
探し物は、千年前の大魔法使いフランメが残した手記です。
それには「死者と対話したという記録が残っている」とされています。
勇者をもっと知っておけば。と後悔したフリーレンのために、僧侶と戦士が文通しながら場所を割り出していました。
見つけ出した手記には、『大陸の遥か北の果て。この世界の人々が天国と呼ぶ場所、魂の眠る地にたどり着いた。そこは多くの魂が集まる場所で、かつての戦友達と対話した』と記されています。
真実かどうかはわかりません。ただ、『天国はある』と思ったほうが都合はいい。
『魂の眠る地を探して、勇者と話す』
当てのない旅に目的が生まれました。
しかし、大陸北部『エンデ』には魔王城があり、魔王軍の残党も残っています。なにより、
『魔王城のあたりってめちゃくちゃ寒いんだよね…行きたくないなー…』
さっそくめげるフリーレンでした。
作風・感想
『魂の眠る地を探す』という目的はありますが、基本的に1話完結で進行します。ドッタンバッタン大騒ぎの冒険譚というよりは、ファンタジー世界の旅漫画という印象が強いです。
ギャグ要素は多いが、画やオーバーリアクションでウケを取るのではなく、『登場人物は大真面目なのに絵がシュール』『RPGあるあるネタ』『毒のあるツッコミ』で笑わせにきます。
『魔法(温かいお茶が出てくる魔法、錆びを取る魔法、甘い葡萄を酸っぱい葡萄に変える魔法)が報酬の依頼を受ける』ことから話が始まり、依頼自体は魔法でアッサリ解決します。話の主軸は『依頼の解決方法』ではなく、なんで依頼を引き受けたのか、どうしてその手段で解決したのか、どういう思考で、なぜその考えに至ったのか、に重きを置いています。
裏の取り合い
バトルシーンは数ページどころか、数コマで終わることがあり、バトルが話の主軸になるのは稀です(まったくないわけではない)。こちらも『戦闘内容』より、戦う理由や、なぜその戦術を選んだのかが事細かく描かれています。
行き当たりばったりではなく、『勝敗は、戦う前に決まっている』と言わんばかりに、作戦や対策を練ってから戦いに挑むことが多いです。ただ高度な頭脳戦というよりは、『相手が意識できない長距離から魔法で狙撃する』など、相手の意表を突きます。意表の突き方も唐突に明かされるのではなく、事前に伏線が張られており、『あのセリフはこのためだったのか』と納得できます。
また楽勝は少なく、『一手でも違えれば敗北していた』など敵の強さの魅せ方が巧みで、短いバトルシーンながら綱渡りのような緊張感で満足できます。
シビアな世界観
ギャグ要素は多いが、世界観は至ってシビアです。魔王は倒しましたが、その残党は残っており、人食いの魔族や魔物といった存在が人を襲っています。
とくに人間とほぼ同じ姿かたちをしており、言葉も話せる魔族が薄気味悪いです。例えば子供の魔族が『お母さん』と命乞いするのは、人間の情を理解しているのではなく、『殺せなくなる魔法のような素敵な言葉』、人間の習性だと思っているからです。
作中では『会話はできるが、言葉の通じない猛獣』と言われており、会話が成り立っているようで、まったく噛み合っていないことに恐ろしさを感じます。
無表情に人を襲い、素知らぬ顔で何度も『お母さん』と命乞いするような魔族は、なにを考えているかまったく理解できません。それは無表情ながらも多くの感情や考え方を感じさせるフリーレンとの対比になっており、登場人物たちの魅力に繋がっています。
また魔王が倒された後の後日談ファンタジーですが、魔王についての描写が皆無で、どんな魔王をどうやって倒したのかは謎に包まれています。話が進むごとに、魔族の強さや恐ろしさがどんどん際立っていくので、徐々に明かされていく『勇者一行の旅』の詳細が気になります。
前向き
話の始まりに『勇者の死から〇年後』と書かれており、作中の時間進行が明確です。1話の中で数か月以上経過することもあり¹、人間関係の変化や成長理由に説得力が生まれています。
¹……時間経過については、唐突に話が飛ぶのではなく、ふきだしがないコマでなにをしていたかが明かされています(本を読む。散策する。ミミックに食べられる。修行をするなど)。
同時に、勇者の像が錆びついてるなど、残酷な面でも時間経過が描写されています。
勇者一行との旅は遠い過去で、その旅は回想という形で語られます。どれだけその光景が面白おかしいモノでも、もう一度はないです。
ただし、悲しいだけではなく、今を生きるフリーレンの生き方や考え方にちゃんと繋がっています。勇者一行との旅がフリーレンに影響を与えており、彼女の成長という形で、過去の経験が前向きに描かれています。
登場人物
フリーレン
1000年以上の時を生きるエルフの魔法使い。
好物はメルクーアプリン。大好物は魔導書(ただし聖典は鍋敷きにする)。嫌いなモノは玉ねぎ。
魔法収集を続ける理由は、『集めた魔法を褒めてくれた馬鹿がいた』から。魔法以外にも変な骨(魔法薬の素材)や薬を買い集めています(弟子いわくガラクタ)。
長命種のエルフらしく、3年は短いという感覚で、感情が感性が乏しいです。弟子いわく『どうしようもないほどにぶい。本当に人の感情がわかっていない』。
基本的に無表情ですが、むふーとドヤ顔したり、隠し事をしているとすぐ顔に出ます。
年齢に関してはやや気にしており、数年前に言われた『ババア』発言をずっと根に持っています。計3回言うと3日3晩、勇者がドン引きするほど泣く模様。
作中では、とんでもなくだらしない姿を何度も晒しており、『弟子に起こされて、ご飯食べさせて、服着せないと昼まで寝ています』。おしゃれにも興味がなく、髪を乾かさずに寝ます(翌朝髪がぼーぼー)。
魔法に関しては、『歴史上で最も多くの魔族を葬りさった魔法使い』と呼ばれるほど実力が高く、人間・魔族の両方に名が知られています。ただ常勝無敗ではなく、自分よりも魔力が低い魔法使いを含めて、過去11回負けています。
見習い魔法使いがよくする欠点(魔法を使う時に、魔力の索敵が途切れる)を持っていますが、熟練の魔法使いにしかわからないうえに、この欠点を突ける魔法使いはほぼいません
また魔法使い全般の弱点「近接職に一定距離まで近づかれると、魔法の発動が間に合わずやられる」にも当てはまっています。
まとめ
ギャグ要素は多いがシビアな世界観で、時間の経過が残酷なストーリーですが、登場人物たちの前向きさで暗い気持ちにならない作品です。
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