『風都探偵/仮面ライダーW』をおすすめしたい!
イントロダクション
その街では、小さな幸せも、大きな不幸も、常に風が運んでくる。
大小の風車がところどころ回る風の街『風都』。
かつて巨大な悪の組織によって、人間を怪人に変えるアイテム『ガイアメモリ』がばらまかれた風都では、組織の壊滅後も、街に残されたメモリを使った超常犯罪が頻発していました。
ビルが溶け、人が死ぬ。メモリの力で怪人『ドーパント』へと変貌した悪党が街を泣かせる時、涙を拭う二色のハンカチーフが助けに入ります。
深紅の複眼、風にたなびくマフラー、彼の名は『W(ダブル)』。
メモリを使うドーパントと対峙するために、メモリの力で変身する『仮面ライダー』。
『仮面ライダーW』。主人公は、2人。主人公は、探偵。主人公は、2人で1人の仮面ライダー。
『さぁ、おまえの罪を数えろ』
街の涙を止めるため、悪党に投げかけ続ける言葉が、風に乗って響きます。
風都を守る戦士・仮面ライダーが数々の超常的な事件に立ち向かっていく、ハーフボイルド探偵ストーリー『風都探偵』をおススメしようと記事にしました。
原作『石ノ森章太郎(以下敬略称)』、作画『佐藤まさき』による漫画作品。
ジャンルは『特撮、アクション』。
2009年にTV放送された『仮面ライダーW』の正当続編であり、TV版に参加していたメインライター『三条陸』、チーフプロデューサー『塚田英明』、ドーパントのデザインを担当していた『寺田克也』が続投しています。
事実上『仮面ライダーWシーズン2』であり、『三条陸』が『TV版・仮面ライダーW』と同じ感覚で読めるように計算してマンガを設計しているため、原作ファンも引き続き楽しめる作りです。
かといって『TV版・仮面ライダーW』を知らなければ楽しめない作品ではなく、新たな登場人物たちに合わせて解説が入り、本編前日談に当たる『ビキンズナイト(始まりの夜)』を事細かに漫画化しているなど、風都探偵から仮面ライダーWの世界に入り込めます。
そのため『TV版・仮面ライダーW』を知っていれば、さらに楽しめるといった感じです。
『ビッグコミックスピリッツ(小学館)』で2017年8月から連載がスタートしました。
コミックスは『小学館「ビッグスピリッツコミック」』から既刊13巻まで発売中です。
2022年9月時点で、累計発行部数は240万部を突破しています。
『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』や『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中(HORNETSと共同制作)』を手掛けた『株式会社スタジオKAI』によりアニメ化が行われており、2022年8月から『U-NEXT』で独占配信されました。
本作の魅力について、ガイアメモリの音声を担当した『立木文彦』は、
『私は普段、漫画を読むほうではないですが、『風都探偵』は読ませていただいてます。展開のテンポが良く、読んでいると時間を忘れるんですよ。
テレビ版と同様に、作品世界に引き込まれていくのは同じですが、映像では難しい表現、漫画ならではの表現が素晴らしいと思います。
作品のムード、スタイリッシュなところも『W』らしさが出ており、個人的には、このまま永遠に続いてほしいと思っています』とコメントしています。
あらすじ(序盤のネタバレあり)
『俺の名前は左翔太朗(ひだりしょうたろう)。極めてハードボイルドな私立探偵だ』
ハードボイルドを気取る『ハーフボイルド』な私立探偵『翔太朗』の元に、今日も奇妙な依頼が持ち込まれます。
『T字路の魔女を探してほしい』
それは最近急に有名になった話であり、女は服を剥がれ、男は金を盗られる、追いかけても絶対に捕まらず、気がつくとT字路で見失う。という怪談じみた話です。
依頼を受けた翔太郎は、幅広い人脈を活かして調査しますが、奇妙なことに素性が掴めません。
それでも足で調査を続けた翔太郎は、T字路の魔女と呼ばれている謎の女性『ときめ』と遭遇しました。
窃盗犯でもあるときめを、翔太郎は説得しますが、話が噛み合わず逃げられます。
翔太郎はときめを追いかけますが、気づけば勝手知ったる風都ではなく、風が止まった見知らぬ街に迷い込んでいました。
そこで正体不明のドーパントに襲われましたが、もう1人の探偵で相棒『フィリップ』の援護を受けて窮地を脱します。
2人はドーパントの正体を掴み、『W』に変身してこれを撃破、ときめも警察に引き渡して『T字路の魔女』が発端となった事件は決着しました。
しかし、ときめの素性は不明なままであり、翔太郎とフィリップが迷い込んだ街『裏風都』も全容が掴めないままです。
この事件は運命の嵐の始まりに過ぎず、仮面ライダーWは新たな戦いに身を投じました。
作風・感想
本作は、風都という街で巻き起こる事件を、2人で1人の探偵が解決していく『推理ものベースのアクション漫画』です。
青年誌に掲載されているため、残虐・サービスシーンが多めです。
ストーリーは、事件解決のために依頼を受けて、調査・推理の後に、戦闘が始まります。長編ではなく、1つの事件ごとに話が区切られており、その裏で渦まく陰謀が徐々に明かされていく形です。
作風は、コメディ要素がありながらも、特撮ヒーローにありがちな勧善懲悪ものとは異なり、善悪を考えさせられるエピソードやビターエンドを迎えて余韻を残すなど、決まったパターンがなく読者を飽きさせません。
それでいて会話のテンポが良く、専門用語や推理パートで小難しい話が続かないので、とても読みやすいです。
個性豊かな仲間と犯人
主人公の翔太郎はハードボイルドを自称しますが、英文タイプライターで報告書を作る時に英語ではなく日本語のローマ字打ちをするなど、締まりません。
相棒のフィリップもブレイン役ですが、知識欲の権化であり、いきなり山にキノコ狩りに向かうなど、変人として扱われます。
そんな一風変わった面白い主人公たちが、カッコよく事件を解決していくのが本作の魅力です。
主人公たちに協力する仲間も個性派揃いであり、『俺に質問するな』が決め台詞の刑事、バカではないが知能が独特過ぎる探偵事務所の所長など、ボケる時はボケ倒すため、真面目な会話になった時の温度差が面白いです。
事件の加害者であるドーパントも、一部を除いて一般人が変身した姿であり、その思考や犯行動機は理解できる人間のままです。強大な力に憑りつかれた悪党もいれば、善人ですが心の弱さに負けて悪事に手を染めたり、やむを得ない事情でドーパントになったなど、あくまで人間の恐ろしさの延長線上です。
主人公たちも『正義のために行動する』という超人的な思考ではなく、それぞれ胸に秘めている理由を原動力に行動するので、敵味方の両方に人間らしさがあり、共感を見いだせる場合もあれば、おぞましい犯行動機にゾッとします。
仮面ライダー・ドーパント
仮面ライダーや怪人(ドーパント)といった非日常を、上手く日常に落とし込んでおり、現代社会にもし超常的な力を持つ犯罪者がいれば、こんな理由と方法で事件を起こすんだろうな、と特撮ですがリアリティを感じます。
ドーパントは怪人に変身するので顔が見えず、登場しても犯人(変身者)が誰であるかわからない状態です。容疑者の中から真犯人を見つけるために、地道な情報収集を行い、仲間たちと推理して追い詰めていく描写は『探偵もの』であり、偶然や都合が良い展開で話をまとめません。
同時に、会敵したドーパントの能力を推察して、攻略法を見つけながら戦う緊張感のあるバトルシーンが魅力です。パワーでゴリ押すといった描写は稀で、必ず能力の穴や弱点を見つけて戦います。
ドーパントの能力がよくわからない状態では翻弄され、見つけたと思った弱点がフェイクだったり、と逆転劇が続き、先の読めないバトルシーンが熱いです。
登場人物
左翔太郎
ハードボイルド(を気取るハーフボイルド)な名探偵。
ハネ毛の茶髪でソフト帽がトレードマークです。
鳴海探偵事務所に所属する私立探偵。
古典的なハードボイルドスタイルの探偵に憧れており、事務所の本棚にはハードボイルド小説を並べています。それらしいキザな決め台詞や行動を取りますが、バッチリ決まるのは稀です。
素の性格は正義感が強く心優しい熱血漢であり、情に厚く涙もろい一面もあるなど、人間味に溢れています。仲間からは度々ハーフボイルドとからかわれていますが、その甘さこそ翔太郎の良さであり、親愛の情が込められています。
キザに振る舞ってカッコつけた結果、墓穴を掘る二枚目半ですが、探偵としては『地道な聞き込み調査』を中心に行う地に足がついた方法で、犯人や重要人物の居場所に警察より先に辿り着くなど、長い探偵稼業に裏打ちされた実力は本物です。
その能力は、戦闘面でも遺憾なく発揮されており、不測の事態が起こっても長年の経験から状況を打開する『切札』になることが多く、甘いだけは終わらせません。
風都育ちで、風都を大切に思う気持ちは人一倍強く、街を泣かせる悪党は許しませんが、罪を憎んで人を恨まずが基本方針であり、どれだけ状況が断定してきたとしても、犯人の本心(なにを思って犯行に及んだか)を掴むまでは思考を止めません。
得意なことは猫探し(鳴き真似で大量の野良ネコと意思疎通可能)、似顔絵(人相モンタージュ)。
フィリップ
翔太郎の相棒で、もう1人の探偵。
外ハネの緑髪で、目玉クリップで髪を留めているのが特徴です。
口癖は「ゾクゾクするねぇ」。
冷静な判断力と、地球上の情報が詰まっている『地球(ほし)の本棚』を用いた『検索』が武器です。検索範囲は一個人の情報から、ガイアメモリが有する概念まで幅広く、足さえ掴めば丸裸にします。しかし、万能ではなく、地道な捜査で得た情報をもとに絞り込み検索するため、『真犯人は誰か?』といった抽象的な検索は不可能です。
知識欲が強く、一度興味の対象を見つけると、寝食も忘れて検索に没頭します。それが原因で遭難した時は、謝罪しつつも表情はキリッとしており、正太郎から絶対また同じことやらかすと言われました。
それでいて検索が終わると、途端に無関心になるなどマイペースで、加えて世間や常識に疎く、突飛な行動を取ります。
そんなバカと天才は紙一重の浮世離れした言動が目立ちますが、その頭脳は本物で、事件解決やドーパントと戦う時に、フィリップの存在は必要不可欠です。
理屈っぽい喋り方のうえに、発言に容赦がないため、初見の人間には勘違いされますが、その点については反省するなど、人間的な成長を続けています。
感情的な翔太郎とは正反対に、現場の状況から言い辛いことでもキッパリ言うなど、捜査方針は正反対に近く、よく口論(仲間からは子供の口喧嘩)になります。反対に言えば、2つの角度から事件を見ているため、意見が噛み合った時の推理力は一流の探偵です。
まとめ
推理パートとアクションパートのそれぞれに魅力があり、原作ファンはニヤリとする描写が多く、初見の人も物語に入りやすい構成です。
気になった方は是非一読してみてください。
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