『ノースフライト(ウマ娘)』ストーリーネタバレ解説・下

の続き

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育成ストーリー

ポジティブを纏う

デビュー前の段階で、『中距離路線でも勝負になりそうなスタミナ、短距離路線でもトップを張れるスピード、機を窺う冷静さ』を持っていました。天性のスピードと聡明さで、デビュー済みのサクラバクシンオーと渡り合う実力は、『短距離、マイル、中距離』の三階級制覇さえ目指せる圧倒的な素質を感じます。

しかしノースフライトは、レースに耐えられる身体を持っていなかった。生まれながら身体が弱く、注意してもトレーニング中に立ちくらみを起こしたり、酷い時は貧血で倒れています。模擬レースで張り切った後は、呼吸が乱れたままで苦しそうにしていました。

デビュー後も体質の弱さは付き纏い、トレーニングは休み休みに行い、デビュー前の子たちが使う器具を使用しています。レース後のライブ終わりに、座り込んで立てなくなり、急遽ホテルをとったこともありました。

クラシック級に入っても、ギリギリの調整で挑んだ桜花賞では、レース後にユキノビジンの肩を借りないと立ってられない状態でした。

『才能があっても、レースに耐えられる身体がなければ絶望的』『後は才能をしっかり発揮できれば』『本当に、体さえ強ければ……』

どの先生も、トレーナーも、デビューしたところで、活躍は難しいとノースフライトに言います。

幼少期に通っていた育成クラブでも、最初はダントツだったが、全力で走れないまま周りが成長していく姿を見てきました。トレセン学園に入学後も同じです。同期たちがデビューしていくなかで、身体に負担がからないように、コースの端っこで簡単なストレッチやケアを繰り返します。

『わたしは、見ているだけなのかな。走れるようになっても、わたしのレース人生って、桜みたいになるのかな。満開の時期はすぐに終わって、いつの間にか去ってしまう……のかな』

周囲の言葉と状況に、停滞したまま全力を出せない身体に、心がどれだけ苦しめられたか。

それでも、ノースフライトは自分に言い聞かせます。

『大丈夫、わたしは――輝く素材を持っているから』

それはノースフライトの美学。

『わたし』を嘆かないこと。生まれ持った『わたし』を愛すること。『わたし』が最も輝くやり方で、『わたし』を着飾ってあげること。

素材を嘆いたところで、道は切り拓けない。愛せなかったところで、『わたし』からは離れられない。鏡を見つめて、ただ溜息をつくだけでは、なにも変わらない。『わたし』の素材が、一番輝くコーディネートを見つける。『わたし』を大好きになるために

『いつか絶対、生まれ持った「わたし」を輝かせてあげられるって、信じてます』

ノースフライトは自分を愛し、輝くばかりの可能性があると信じて、前を見据えていました。目を細めるほどの眩しさ、聡明さ、ブレない芯。たとえ1人でも果てのない夢を叶えられるに違いない強い心

ウマ娘として全力で、思いきり走りたい。自分の持つ全てを、輝くその才能を――何も気にせず、全力でぶつけたいに決まっています。なのに堪えて、いつか叶うからと自分に言い聞かせて走るのは、どれほど苦しいことなのか。

『わたしは「わたし」のままでいい』と教えてくれたのはお姉ちゃんです。ただ、ポジティブを纏い、諦めないと決めたのはノースフライト自身です。そうすれば、愛おしいくらい、扱いの難しい身体でも最大限に輝けると信じています。

知識を纏う

自他ともに認めるポジティブで、『誰も到達していない、未知の輝きを纏いたい。つまり三階級制覇です』と『自分が一番輝けるコーディネート/夢』を語るが、夢見がちなだけではありません。

身体が動かせない分、考える時間はたくさんありました。ノースフライトの豊富な知識量と思考の柔軟さは、体質が弱いからこそ、たくさん考えて成長してきた証です。

ただひたすらに、徹底的に、己の身体と向き合い続けてきました。その日々が綴られた『フーちゃんのレース研究』は12冊目を迎えています。たくさんのメモが挟まれたノートの中身は、『思考、実践、失敗』を繰り返す停滞の日々が綴られています。

停滞の中でも、ノースフライトの文字は機械的なまでに精緻せいちでした。だからこそ、書き込まれた全てから、叫びが聞こえてきます。

絶対に、諦めない。諦めてなんか、やるものか。大丈夫、わたしならできる。輝ける。大丈夫、いつか必ず――全力で、走りたい』

それが難しいことを理解しています。幾度も思い知り、なりたい『わたし』には、なれないのかもしれない。そう思った日もあります。それでも、妥協ではなく、可能性を磨き続けました

自分の素材とひたむきに向き合い続けたノースフライトは、現実をよく知っています。それは、素材そのものは作り変えられないこと。体型や年齢の変化に合わせて、その時に一番相応しいものを着るように。生まれ持った素材という制限を愛しています。

自分を愛しながらも現実は厳しいと知っているから、トレーナーが『君が全力を出せるように、手伝わせてほしい』とスカウトした時に、ノースフライトは尋ねました。

『……いいんですか? そんな日が来るか、わからないんですよ

全力を出さなければ、挑むことさえ許されない夢。『そんな難しいコーディネートをお願いできる/ノースフライトにはそれが似合うと信じている』、信頼し合えるトレーナーでなければ、きっと不似合いで終わります。

小さなことでも話し合い、言葉にならない感情だって拾い上げる。ウマ娘の本当の輝きを、見つけられるような、可能性を信じて広げられる関係なら。強さで覆ったやわらかい心に、優しいベースをかけてあげられるなら、ピッタリのトレーナーです。

『誰も到達していない、未知の輝きを纏いたい。そのためには、信頼できる方の視点も必要です。きっと、苦労をおかけします。でも……この先も、ステキなコーディネートをお願いできますか?』

遅れてきたスピード女王

ノースフライトのコーディネートの肝は、短距離路線の中でもスプリントとマイルを明確に切り分けること。距離の長い中距離路線は第一目標から外して、最高速度の維持が求められるスプリントではなく、途中で息を入れられるマイルが軸です。

その方針でトレーニングを行い、デビュー前の段階だと、全力で走れるのは200m。それ以上は、『今は』難しいです。

『走っていると、いつも脚が疼く。でも大丈夫、耐えることは得意だもの。200m「も」あるんだから。本当の輝きを見せるには、あまりある

課題はまだまだ山積みだが、一瞬でも全力を出せて、希望が見えました。

デビュー戦では、観客をハッとさせるスピードで勝ち抜き、輝きを――可能性の高さを見せつけます。

デビューできること。本気のレースで走れること。それは小さな一歩かもしれない。けれど、ノースフライトにとっては夢のような、大きな大きな一歩です。

それからクラシック級の春先まで、トレーニングをコツコツと積んでいき、じっくり体と向き合いました

ただ周囲の成長が著しい今、デビュー前とは違い、焦りが出ても不思議ではありません。同じレベルで切磋琢磨し、成長を促し合える存在が、ノースフライトにはいなかった。

デビュー前からサクラバクシンオーを意識しており、『いつかはわたしの素材、スピードを、あの子にぶつけてみたい。ベストコーデのわたしで、あの子と走りたい』と思っているが、大きな実力差から見送るだけです。

『今はまだ、あの子とは戦えません。わたしの位置は、ここ。でも――』

トレーナーは『お姉ちゃん』に相談して、頭を使うことが大好きなノースフライトと、対等に切磋琢磨できる方法を教えてもらいます。それはクイズを出し合うこと。同じ負荷ではなく、同じ立場で、ライバルとして必死に支えていきます

ただ幼少の頃から頭を使ってきたノースフライトとクイズで競い合う難易度は高く、

Q.1ハロンは何m A.約200m。国際フィートだと、正確には201.168m。

Q.洋芝の特徴を答えよ。A.主に欧州のレース場で使用。保水量が高く、反発力が低いため、一般的にパワーの必要なバ場になりやすい。

Q.桜花賞が京都で行われた回数。A.京都開催だった期間が3年、その後にもう1回なので4回。と思わせて、去年も去年も京都レース場開催だったので、5回。

などなど、トレセン学園に所属する中央トレーナーと渡り合う知識量です。しかもノースフライトの基準では、『Q.マイルチャンピオンシップの勝者、ダイタクヘリオスのタイムは? A.1分34秒8』が簡単なレベルで、とっておきの難問はトレーナーが待ったをかける難易度でした。

それからも2人で真摯に身体と向き合い続けた結果、負荷のかかるレースにたくさん出走してもいいと、病院の先生からお墨付きをもらいました。

激しいトレーニングは徐々にで、まだ気は抜けません。本格的なランウェイはここから、今はまだスタートラインが見えただけです。

『ここから爆速、バクシンで成長していかなきゃ』

妄想コーデ

『ベストコーデは決まってるけど、中距離で走るわたしは、また違った装いになると思うんです』

着実に、一歩ずつ……そうやって進んできたノースフライトが、初めてマイル以外で、レースへの期待を口にしました。

『ライバルたちが眩しくて、妄想コーデが広がっただけ、気にしないください』と、ノースフライトは取り下げたが、トレーナーは拾い上げます。昔は難しかった。けれど今なら、今の自分たちなら、もう1歩踏み出して考えられる

今のノースフライトは、可能性に満ちている。自分とたくさん向き合う時間があったから、しっかりと下地を整えることができた。だからこそ、どんな素材も乗せられる……どんなファッションだって、着こなせる

ティアラ路線の三冠目。中距離2000mの秋華賞で、最高の冒険だってできます。

『あの子と競い合いたいって、思ってるのに……秋華賞に冒険して、いいんでしょうか』

今のままで、いいのか。全力を出せることが、ただうれしくて、それだけです。ライバルたち――サクラバクシンオーはもう、とっくにその先にいる

短距離路線のトップレースは、あのサクラバクシンオーでさえ、呑んでしまう。呑まれてしまう、スピードの極地です。目移りせず『ベストコーデ/マイル軸』に立ち返るべきか、ノースフライトは迷います。

トレーナーは、ノースフライトの可能性を信じました。

中距離に挑んでも、出遅れるわけではない。そこで得たものは、短距離路線でも活かせるはずです。それに、レース人生は、とても貴重なもの。全盛期はそう長くない。一度しか挑めないレースだってある。そのかけげのなさは、ノースフライトだからこそ、よくわかるはず。

『いいんでしょうか。やりたいことを、全部やっても』

様々なファッションを楽しむ。その幸せを知っているノースフライトに、トレーナーが伝えたいことは1つだけ。『ファッションみたいに、レースも楽しもう』。やりたいことを全部やってきたから、諦めなかったから、ノースフライトは今ここにいます。

中距離コーデも纏う。サクラバクシンオーにも勝つ。なにも諦める必要はない

『諦めなかったから、わたしは、今。わたし……もう迷わない。全部、楽しみます! わたしだけの競技人生ファッションを!

遅い歩みだったけれど、それでよかった。ファッションは自由なもの。ただ、自分だけでは思いつかないコーディネートもあります。

『今、とっても充実した気分です! 中距離コーデも、わたしらしく纏います!』

秋華賞に挑んだノースフライトの評価は、慎重な歩みで進んできたため、やや控えめでした。

ベストではない距離、なにかがあるかもしれません。

『少し、怖い……でも』

出会った頃は、全力を出しきることは叶わなかった。そんなノースフライトが、たくさんの時間をかけて、ようやく輝きます

思いきり踏み出して、駆けて、全力で。飛んでいみるたいな速さで、ノースフライトは駆け抜けました。

『楽しいっっ! 合っていた。自分を、信じてよかった。わたしは、レースが、とっても似合う!』

すごく幸せでした。大舞台で、全力で走って、『わたし』の素材をちゃんと見せられて。冒険してよかった。自分の個性を、もっと愛せるから。もっともっと、自分らしさを、表現したい。純度の高いスピード、この個性を、誇りたい。

この先は、ノースフライトなりの王道。ベストコーデに専念します。主軸にすると決めたマイル。短距離路線への挑戦が、いよいよ始まりました

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に続く