『勇者、辞めます』をおすすめしたい!
イントロダクション
『元勇者レオ・デモンハート! 愚かな人間どもを滅ぼし、魔族の王国を作るため、新生魔王軍団への入団を希望する!』ボロボロになった魔王城に面接を受けに来た勇者『レオ・デモンハート』でしたが、魔界の覇者にして爆炎の女帝の異名を持つ魔王『エキドナ』の返答は『不採用に決まっとろうがボケェ!』でした。
それもそのはず、魔王城をボロボロにして魔王エキドナを打ち倒した勇者こそレオだったからです。まったくもって歓迎されていないにも関わらず、レオが魔王軍に入ろうとするのには理由があり……。
自分の手でボコボコにした魔王軍の再生から始まる『勇者、やめます』を推そうと記事にしました。
『クオンタム(敬略称)』によるライトノベル。ジャンルは『異世界ファンタジー』。
KADOKAWAの小説投稿サイト『カクヨム』にて2017年1月12日から2月7日まで連載されており、メインストーリーは完結済みで、番外編が不定期に投稿されています。
四六判版が『カドカワBOOKS』より全3巻で刊行されており、その後文庫版が『富士見ファンタジア文庫』より2022年2月19日から刊行されています。既刊は2巻で、web版の続きである第2部が始まっています。イラストはどちらも『天野英』。
漫画版が『風都ノリ』により『ヤングエースUP』(KADOKAWA)で2018年5月31日から連載中です。既刊6巻(2022年4月現在)。
『アサシンズプライド』や『チート薬師のスローライフ〜異世界に作ろうドラッグストア〜』を手掛けた『株式会社EMTスクエアード』により2022年4月からアニメ版は放送開始されました。キャッチコピーは『正体を隠して組織改革! 最強勇者の転職先は魔王城』です。
音泉にて『勇者、辞めます ラジオ、始めます』が2022年4月11日より隔週月曜日で配信されており、MCは『小野賢章』と『本渡楓』が回替わりで担当しています。
第2回カクヨムWeb小説コンテストファンタジー部門で大賞を受賞しています。
本作の魅力について、レオ・デモンハート役の『小野賢章』は『物語の前半部はコミカルだが、重くて複雑な設定が待っていて意外性がある』、魔王エキドナ役の『本渡楓』は『読み進めるとびっくり展開があり、タイトルがああいう形で回収されるとは!』とコメントしました。
またアニメ版の総監督である『信田ユウ』は『この作品は、後半でびっくり展開が待っているよ!』とキャスト陣に語っていたそうです。
あらすじ(序盤のネタバレあり)
勇者に敗れてボロボロな魔王軍は、人材を募って再起を図っていました。そこに何食わぬ顔でやってきた勇者『レオ・デモンハート』は、魔王軍に参加しようと面接を受けますが、採用されるわけもなく魔王『エキドナ』によって追っ払われます。
しかし諦められないレオは、四天王をこっそり捕まえて、説得します。単独で魔王を倒せる勇者レオは、その力を危険視されて、人間の国から追放されていました。『世界が俺を滅ぼそうとするなら、俺が世界を滅ぼしてやる』それが魔王軍に入る表面上の志望動機です。裏の理由は、レオからすれば雑魚の追っ手がしつこく、木のウロや馬小屋に隠れて眠る日々に嫌気が差して、食べ物と寝床に加えて刺客を追い払う必要のない魔王軍が魅力的だったからです。
四天王を懐柔説得して、ひとまず一か月間のおためし採用で、エキドナに正体を隠しながら魔王軍で働くことになったレオですが、ガタガタになった魔王軍(レオが原因)の再編成は最強の勇者でも一筋縄ではいかず。
オーバーワークで書類の山を築く淫魔、軍の生命線である兵站担当にも関わらずオツムが残念な獣人、才能があり努力を欠かさないがゆえに新人教育ができない竜人、優れた隠密スキルで偵察を行うもコミュニケーション能力が残念な半人半魔、果てには上司(魔王)とサシで飲み会などなど。
様々な問題を抱えている魔王軍が、なぜ人間界から魔界に撤退しないのか。単独で魔王を倒せるレオがわざわざ魔王軍に入って世界を滅ぼそうとする理由はなにか。
勇者を辞める物語が始まります。
作風・感想
前半は全体的にコミカルな作りになっており、話に入りやすくなっています。物語が進むにつれて、レオやエキドナの真の目的や重くて複雑な世界設定が明らかになっていきます。
社会の荒波の中で生きていくために必要な心構えや考え方を含む、自己啓発本的な要素がある社会派な一面もあり、ファンタジー要素を楽しみながら、自分の生活に置き換えても共感できる部分が多い作品になっています。
作中では人間側と魔族側に別れて争っていますが、どちらにも大義があり、滅ぼし合うのか、それとも折り合いをつけていくのかも見所の一つです。
登場人物
レオ・デモンハート
本作の主人公。世界最強の勇者。
剣術、魔術は作中最強レベルですが、あまりにも強すぎたことが災いして人間社会から追放された過去があります。
単独で四天王を倒し、魔王城に攻め入って魔王エキドナを倒した張本人であり、面接の自己PRの際も『一対一でエキドナを打ち倒した実績あり、即戦力として活躍可能!』と言ってエキドナを激怒させていました。
『俺は強い、だから仲間などいらぬ、ぶっちゃけ邪魔だ』とありのままを言い切ってしまう性格で、しかも実際に強いから始末が悪く、幅広い人脈を作り、組織を動かす手腕はあるものの、優秀過ぎるがゆえに独断専行をしてしまう悪癖があります。
そんな性格だから1人で魔王を討伐する羽目になったのではないか、と四天王からはツッコミを入れられており、本人も反省しています。
昔は口下手で苦労した経験からコミュニケーション能力自体は高く、圧倒的な知識量と経験で、四天王や魔王軍の兵から相談を受けてカウンセリングも行っています。
マジックアイテムの作成から始まり、接客業や料理もこなすなど多彩ですが、何でもできるがゆえに悩みがあっても相談できず、自分で解決しようとするなど、他人を頼らない(信じない)所があります。
あまりにも高過ぎる戦闘力には謎が多く、エキドナの最上位魔法を食らっても最初はダメージを受けていましたが、だんだん効かなくなっていくなど、強いというだけでは説明できない部分があります。
知識量も若い見た目に反してあまりにも多く、数千年前の世界についても詳細を知っているなど、謎が多いです。
魔王エキドナ
とある目的のために魔王軍を率いて人間界を侵略しに来た、魔界最強の魔王です。
本来はナイスバディな美女だったのですが、レオに敗北したおしおきで垢抜けない少女の姿になっています。
民の上に立つ王として、常に堂々とした偉そうな態度で振る舞いますが、根は部下想いの優しい女性であり、妙に人間臭い魔王です。
人間界を侵略する際に、無抵抗な人間に対して手を出すことを徹底して禁じるなど、魔族側から見ても珍しい存在で、レオが魔王軍に入った理由の一つにもなっています。
酒豪でいくら飲んでも酔わず、瓶ごと飲み干しても酔い潰れることはありませんでした。
レオに完膚なきまでに叩きのめされて、軍団の大半を失い、占領していた土地も失い、それでも魔界へ退かないなど、芯が強く目的を果たすまで決して諦めない姿勢が、部下からの信頼を勝ち取っています。
まとめ
序盤はコミカルでほのぼのとしていますが、物語が進むにつれて明かされていく真相が、より強く読者を魅了する作品です。気になった方は、是非一読してみてください。
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