『組長娘と世話係』をおすすめしたい！
イントロダクション
『娘の世話係になれ、断ったら〇す』
流れるような脅迫と共に、『桜樹（さくらぎ)組』の組長から仕事を任されたのは、裏社会で『桜樹の悪魔』と呼ばれる若頭『霧島透（きりしまとおる）』です。
腕っぷしの実力はありますが、『面倒なことは暴力で解決』と自由過ぎる言動で好き放題やらかしており、毎日のように返り血を浴びていました。
そんな霧島に責任感を持たせるため、組長は自分の一人娘『桜樹八重花（やえか）』の世話係を命じます。
２８歳の極道と７歳の小学生の組み合わせに、舎弟から絵面が悪魔の契約と好き放題言われますが、奇妙な新生活はスタートしました（舎弟は〆た）。
人見知りで内気の一人娘に心の距離を感じながら、悪戦苦闘するイケメンヤクザのハートフル（？）コメディ『組長娘と世話係』をおすすめしようと記事にしました。
『つきや（以下敬略称）』による漫画作品。ジャンルは『コメディ、任侠』。
元々はpixivで公開されていた作品ですが、２０１８年６月からウェブコミック配信サイト『コミックライドピクシブ』で連載開始するに辺り、ページ数の増加や設定の見直しが行われました。２０２０年５月からは『コミックELMO』に移籍して連載中です。
コミックスは『マイクロマガジン社〈コミックELMO〉』にて、既刊８巻まで発売されています。
累計発行部数は２０２２年７月時点で８５万部を突破しました。
『pixivコミックランキング２０１８』第３位にノミネートされ、『ゲスと幼女賞』を受賞しています。
メディアミックスとして、『パパのいうことを聞きなさい!』を手掛けた『有限会社フィール』と『株式会社ガイナ』の共同制作でアニメ化が行われ、２０２２年７月から放送が開始されました。
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本作の魅力について、
霧島透役の『細谷佳正』は『原作を読んだ時に、自分の作りたいものを、意思を持って、自分の作りたい形に作ったのだなと感じました。そういう作品が注目されて、アニメ化され、より沢山の人に知って貰える事が本当に嬉しいです。 優しい登場人物達を、いじらしく愛おしく感じて貰えるような、素敵な作品になると思います』
桜樹八重花役の『和多田美咲』は『以前、広告やドラマCDで八重花役として出演させて頂き、その際に原作を追い始めました。コメディなシーンからキャラクターの人生、繊細な感情まで表現されていて、ずっと大好きな作品です。きっとひとりひとりの胸の奥まで届いて、大切なものになると思います』
とコメントしました。
あらすじ（序盤のネタバレあり）
『やえちゃん。やっと、お父さんと一緒に暮らせるよ』
とある事情から叔母の家で過ごしていた『桜樹八重花』は、桜樹組の組長である父親と一緒に住むことになります。
新生活を始めるにあたり、世話係として父親の部下であり桜樹組の若頭『霧島透』がそばにつきました。
物怖じしないながらも人見知りであった八重花は、霧島と視線を合わせることができず、やや距離が開いた日常が続きます。
夏休み間近、先生から授業参観のプリントを渡された八重花は、プリントを誰にも見せず隠しました。
父親が仕事で来られないことを察していたからです。
霧島に対しても、プリントを隠した部屋に入らないでと言いました。
そして授業参観当日、クラスメイトが家族と触れ合う中で、八重花は父親の言葉を思い出します。
『望みを叶えてやれないかもしれない、だが望みは消さなくていい、我慢を覚えてなくていいんだ』
来るのは難しいと分かっていても、本心では来てほしいと望んでいました。
机の下で誰にも気づかれないようにスカートを、ぎゅっと握り締める八重花に声をかけてたのは、この場に現れないはずの霧島でした。
八重花が驚いて顔を上げると、霧島は見慣れたサングラスとシャツではなく、周囲と合わせたラフな姿『へんな恰好』です。
八重花の元気がなかったことに気付いた霧島と叔母が、部屋の中でプリントを見つけ、来られない父親や叔母の代わりに、やれる限りのことはやろうと手を尽くした結果です。
そんな事情を知らない八重花には、霧島が教室にいる理由はわかりません。それでも来てくれたのは、
『うれしかった、ありがと』
面と向かって、八重花は気持ちを言葉にします。
前よりちょっとだけ感情を見せられるようになった八重花は、霧島、父親、叔母、桜樹組のみんなに囲まれながら、新たな生活に馴染んでいきました。
しかし、『ヤクザ潰し』として暴れていた霧島に恨みを持つ輩が現れたり、交通事故で昏睡状態になった母親の事件には続きがあったり、と穏やかな日常ばかりではなく……。
作風・感想
本作は、お年頃な幼女と鬼畜イケメンヤクザの組み合わせというギャップを楽しむ作品です。ヤクザが幼女と公園で遊んだり、幼女が好きなアニメのキャラクターを覚えようと頑張るエピソードなど、微笑ましいモノが多くなっています。
ヤクザが出てくるので、返り血が凄いことになったり、殴る蹴るの描写はありますが、グロいと感じるシーンはありません。また幼女が暴力沙汰に巻き込まれることもほとんどなく、日常を穏やかに過ごすため、裏で大人たちが頑張っている感じです。
ストーリーの時系列は繋がっていますが、基本は１話完結、長くても２～３で話が区切られます。基本的にコメディ作品ですが、時々ヤクザらしいおっかないシーンも挟まり、主人公の１人『八重花』の母親の身に起きた事件など、少しずつ伏線が張られていきます。
登場人物の数だけ人生がある
作品に登場するキャラクターたちには、それぞれ過去があり、現在に繋がっている様子がしっかり描写されています。
主人公である霧島も『ヘラヘラしたヤクザ』というキャラクターで終わらず、その生い立、なぜヤクザ潰しになったのか、どうして桜樹組に入ったのか、どういう人物の影響を受けて今の人格に育ったのか、同じサングラスを愛用している理由や身体に入れた刺青の意味まで、霧島という１人の男の人生が詰まっています。
サブキャラクターたちも同様です。オネエのキャラクターが『どうしてオネエであることを周囲に隠さなくなったのか』、舎弟になった男が『どうして霧島を慕っているか』など、『個性豊かなキャラクター』で終わることがなく、それぞれの人生が描かれています。
キャラクター同士の繋がりが、大切に扱われているのも魅力の１つです。霧島が八重花の子供らしい素直さに影響を受け、八重花は大人である霧島から学び、その霧島も昔は兄貴分から学んでいたなど、人の繋がりが続いています。
登場するキャラクター同士の掛け合いも多彩です。叔母とオネエ、舎弟と警察官、組長と近所に引っ越してきた外人という意外な組み合わせでストーリーが進みます。
登場人物
霧島透
２２ねん桜樹ぐみ。２８歳。ヤクザ グラサン 三白眼 八重歯 デフォルトでへらへら。
桜樹組の若頭で、その腕っぷしは単独でヤクザの事務所を壊滅させるほどです。
拳銃に対しても素手で臆することなく立ち向かっていき、下っ端なら文字通り秒で片づけます。
ついた通り名は『桜樹組の悪魔』、それを象徴するかのように、身体には西洋風の黒い鎖の刺青が入っています（舎弟いわく悪魔の刻印）。組長や舎弟からは信頼される一方で、壊滅させた組の生き残りからは恨まれており、その実力に興味を持っている人間も多いです。
また若頭として桜樹組をまとめていますが、自由奔放な部分があり、脳内でＧＯサインが出ると容赦なくボコボコにするため、責任感を養うために世話係を命じられました。流血沙汰にならない仕事をしているのが珍しいと言われるほどで、本人も頭使って仕事したことあったっけ？ と疑問を抱くほどです。
ただ自由な性格ですが言われるほど無責任ではなく、組の教えを守り、カタギにも手を出さず、失敗した時は自分なりに責任を取ろうとしています。
その自分で決める自由な生き方は他人の人生に影響を与えますが、本人は無自覚でまったく覚えていません。
常時ヘラヘラしていますが、能天気で頭空っぽではなく、授業参観に参加した時は緊張して入るまで数分かかったりするなど、人間らしい部分があります。周囲の個性的な人間に頭を悩ませることも多く、作中では常識人ポジションでツッコミを入れることが多いです。
好きなモノは最後まで残し、好物のホットケーキは手でちぎって食べるなど、意外と子供っぽい部分があり、ふたについたアイスやケーキのフィルターについた生地をスプーンですくって食べる姿を八重花や舎弟に目撃されています。
昔は世の中全て憎んでるみたいな顔をしており、笑うことなく冷たい表情をしていました。しかし、その頃から羊の人形を買ってこいと言われてラム肉を買ってくるなど、興味がないことには関心を示さない人間でした（本人曰く過去の自分は無能）。
桜樹八重花
１年２組。７歳。黒髪姫カット ませてない子供 やや無口。
お人形さんと言われるほど可愛らしい見た目をしており、おっかない組長に似なくて良かったと度々言われています。ただ不服そうな顔は父親そっくり。笑顔は母親似。
人見知りですが、誰が相手でも言おうと思ったことは言える度胸を持っています。
わかりにくいだけで感情は豊かであり、嬉しいと周囲にほのぼのオーラが出ます。
内気と言われるほどおとなしい性格で、騒いだりわがままはほとんど言いません。しかし、仕事で出ていった霧島が帰ってくるまで起きていようとしたり、明日公園に行く約束を何度も念押しするなど、子供らしい部分はあります。
定食屋の叔母が作る卵焼きとうさぎのみーちゃんが好きです。
まとめ
ヤクザと幼女のギャップから来るシュールなギャグが面白いです。登場人物が増えるごとに話の輪が広がっていき、新たな人間関係やそこから生み出される変化が飽きを感じさせません。
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