『ようこそ実力至上主義の教室へ』をおすすめしたい!
目次
イントロダクション
『オレは、特に癖も特徴もない。ただ自由な、そう、自由な鳥になりたくて、籠を飛び出した一羽の鳥なんだ』
事なかれ主義を公言する無気力で特徴のない男子生徒『綾小路清隆(あやのこうじきよたか)』は、卒業することができれば、希望する進路にほぼ100%進むことができる全国屈指の名門校『高度育成高等学校』に入学しました。
入学生たちには現金と同価値のポイントが月10万円分も与えられ、遅刻欠席、授業中に私語や携帯を触っても注意されません。
綾小路が所属するDクラスの生徒たちの多くは、高校生になり義務から解放された自由を謳歌していましたが、一部の生徒たちは違和感を感じていました。
日本屈指の進学校にも関わらず、入試でオール50点という平均的な点数を取った綾小路より学力が低い生徒や素行に問題がある生徒が入学できていることです。
学校の方針は『将来の日本を背負って立つ若者世代を育成すること』であり、そこからテストの点数だけで生徒たちの合否を決めていないという考えに至ります。
さらに毎月10万ポイントが振り込まれるにも関わらず、校内にポイントを使い過ぎた者に対する救済措置が設置されていることに気づきました。しかし、全ては後の祭りです。
入学した翌月、Dクラスの生徒たちはポイントを確認しましたが、10万ポイントが振り込まれていません。
動揺する生徒たちに、担任は『クラスの成績がポイントに反映される』ことを話し、振り込まれるはずの10万ポイントを遅刻欠席、授業中の態度や小テストの点数の結果で全て消費してしまったことを伝えます。
高度育成高等学校は実力で生徒を測っており、その結果Dクラスの評価は0でした。
他のクラスはAクラスからDクラスにかけて、アルファベット順に評価が下がっています。
実は生徒たちは優秀な順にクラス分けされており、Dクラスは毎年落ちこぼれが集まるクラスでした。
またクラスポイントは毎月の支給ポイント(クラスポイント「1000~0」×100)と連動しているだけでなく、そのままクラスのランクに反映されます。
さらに進路が約束されるのは卒業時に最も成績の良かったAクラスだけであること、成績が伴わない生徒は問答無用で退学処分になる厳しいルールが突き付けられました。
そんな話は聞いていないと一部の生徒は非難の声を上げますが、進学校であるにも関わらず放任主義に疑問を持たず自由を謳歌した者が愚かであり、疑問に思ったが裏付けをせず行動しなかった者もまた同罪です。全てはクラス全体の自己責任でした。
最後に、数週間後に迫る中間テストで一科目でも赤点を取ったら退学であることが告げられます。
来月のポイントのために、もしくはずっと先を見据えて将来の望みを叶えたいならば、その場しのぎではなくAクラスへ昇格するために知恵を絞らなければなりません。
Aクラスに興味がなかった綾小路でしたが、Aクラスに対して並々ならぬ執着心を見せる『堀北鈴音(ほりきたすずね)』に巻き込まれる形で、評価0のDクラスを改善していくことになります。
優秀な者だけが好待遇を受けられる頭脳戦『ようこそ実力至上主義の教室へ』をおすすめしようと記事にしました。
『衣笠彰梧(以下敬略称)』によるライトノベル。イラストは『トモセシュンサク』。
略称は『よう実』。ジャンルは『群像劇、頭脳戦』。
『MF文庫J (KADOKAWA)』により2015年から刊行されています。
小説は『KADOKAWA(MF文庫J)』にて既刊22巻まで発売中です。
3年間の学生生活を描く作品のため、15巻からタイトル語尾に『2年生編』がついています。
また○.5巻は短編集となっていますが、作中の補完だったり、次巻に続く準備段階のストーリーなど、本編と密接に関わっているため飛ばして読むのは非推奨です。
シリーズ累計発行部数は650万部を突破しました。
『このライトノベルがすごい! 2020年』から3年連続で読者投票では1位を受賞しています。
その他にもライトノベルを中心としたランキング『ORICON ライトノベル年間売上ランキング』『BOOK☆WALKER 電子書籍年間ライトノベルランキング』で数年間TOP10入りを果たし続けており、女性読者からも人気が高いです。
また海外向けの外国語版も刊行され、国内外問わず多くの読者がいます。
メディアミックスとして、コミカライズ化とテレビアニメ化が行われました。
コミカライズ化は作画『 一乃ゆゆ』の手で行われており、『月刊コミックアライブ』にて連載中です。
コミックスは既刊12巻まで発売しています。
2年生編も『紗々音シア』の手でコミカライズ化されており、一年生編と同誌で連載中です。
コミックスは既刊1巻まで発売しています。
スピンオフコミカライズとして作画『サカガキ』による『ようこそ実力至上主義の教室へ √堀北』が全2巻で発売中です。主人公『綾小路清隆』とクラスメイト『堀北鈴音』が中心の話であり、本編で行われる頭脳戦ではなくラブコメに近い内容になっています。
テレビアニメ化は『株式会社スタジオ雲雀』により制作され、第1期(原作3巻まで)が2017年に、第2期が2022年7月から放送が開始されました。
監督は『暗殺教室』の『岸誠二』と『ご注文はうさぎですか?』の『橋本裕之』によるダブル監督体制です。
また1年生編は全てアニメ化されることが告知されています。
ようこそ実力至上主義の教室へ シーズン1をAmazon Prime Videoで見よう! 月額500円 今なら30日間無料
ようこそ実力至上主義の教室へ シーズン2をAmazon Prime Videoで見よう! 月額500円 今なら30日間無料
本作の魅力について、
『岸誠二』は『ポイントのみで払える学園の生活。その中でいろいろとポイントを巡ってドラマが繰り広げられるのが、非常に面白い。ラノベだけれど、ラノベっぽくない。珍しい題材の知的なバトル。学生のみなさんは『社会に出たらこうなのかなあ』と思いながら見ると面白いんじゃないかと。ルールなんてあってないんだって(笑)』
『橋本裕之』は『ルールに従っているように見えるけど、そのルールっていうのはどういうものなのか、っていうのをよく考えるというのが面白いと思います。実社会だと、すでにある事実を前にして無理だわってなっている人が多くて、もし逆の方法で考えてみたらどうだろう、実はこれができたんじゃないかと閃いても行動できない人が多いと思うんです。そういった人たちが見ればより面白いんじゃないかと思いますね』
とコメントしています。
あらすじ(序盤のネタバレあり)
学力、身体能力ともに優秀で容姿端麗な少女『堀北鈴音』は、兄である『堀北学(ほりきたまなぶ)』を追いかける形で完全実力主義の『高度育成高等学校』に入学しました。
しかし成績優秀であるはずの堀北は、落ちこぼれが集まるDクラスに配属されます。
入学から1ヵ月が経ち、Dクラスは評価0と最悪なスタートを切ったこともあって大半のクラスメイトはAクラスになることを諦めていましたが、堀北は昇格を諦めず行動を開始しました。
まず隣の席であり、入試試験と小テストで全て50点を取っていた訳のわからない男子生徒『綾小路清隆』を巻き込み、クラスポイントを上げるためにクラスメイト全員の赤点回避を目指します。
そのために直近の小テストで赤点を取ったクラスメイトを集めて勉強会を開きますが、授業をまともに受けない者に対して『愚か者』、と正論ですが上から目線の高圧的な物言いを平然と行ったため勉強会は一瞬で崩壊しました。
後日、赤点組を切り捨てることでクラスのマイナス要素を取り除こうと考えますが、綾小路からそれとは別に『クラス内で退学者を出すとクラスポイントはマイナスされる』のではないか、とも考えていることを看破されます。
また堀北がDクラスに配属された原因は、優秀であるがゆえに他者を足手まといとして突き放し、見下すその考え方が原因ではないか、と指摘されました。
『高度育成高等学校』では学力だけで優劣を決めておらず、現状を考えても綾小路の言葉には説得力があります。
綾小路に言いくるめられる形で、堀北は自分自身のためにも赤点組の面倒を見ることを決めました。
そのためにクラスでは顔が広く人気もあり、なぜか取り入ろうとしてくる女子生徒『櫛田桔梗(くしだききょう)』に協力を仰ぎ、彼女で釣って勉強会を開き直します。
途中、綾小路と櫛田が3年生と接触し、ポイントを上手く活用して中間テストの過去問を手に入れたこともあって、赤点組は全員テストの点数を引き上げましたが、1人だけ1点足りていませんでした。
堀北は担任と交渉を行っていた綾小路と共にポイントでテストの点数を買い、脱落者無しで中間テストを乗り越えます。堀北も少しずつですが、他者に認められる部分を見つけるなど変わり始めました。
それからクラスメイトの暴行事件や無人島での特別試験を乗り越えた堀北は、クラスメイトだけでなく、他クラスからも注目され始めます。
しかし『とある特別試験』でなにもしていないにも関わらず、手柄が自分のモノになっている状況に、何者かの思惑を感じた堀北は、中間テストの時から自分を隠れ蓑にして暗躍し続ける綾小路の真意を確かめるために詰め寄りました。
作風・感想
本作は血は流れませんが将来を賭けてクラス単位で戦略を練り、3年間の高校生活を通して戦い続ける頭脳戦がメインの作品です。
たった1人が優秀でも勝てないクラス対抗戦
学校から次々と提示されるゲーム染みた課題『特別試験』をクリアすることでポイントを獲得できるため、個人での駆け引きはもちろん、クラス全体で知恵を絞り合います。
たった1人だけが秀でていても、クラス単位で見ると落ちこぼれであり、個人が回りの意見を尊重せず独断専行すると全体の輪を乱して結果的に敗北するなど、必ずクラスの意見をどんな方法であれまとめる必要があります。そこで人間同士の駆け引きが生まれるのが魅力の1つです。
クラスメイトとはいえ赤の他人であり、お互いを嫌っている場合ももちろんあります。その者たちを仲間としていかに繋ぎ留めるか、また裏切っていてもどのように被害を抑えるかが重要です。
デットエンドがないデスゲームゆえに、戦後処理も重要な頭脳戦
クラスがまとまるのがゴールではなく、そこからようやくクラス同士の頭脳戦が始まります。知恵比べはもちろん、彼らが所持している現金と同価値のポイントを使った買収や籠絡、法や規律に触れない限りは脅迫も可能と何でもありの過酷なサバイバルゲームです。
そのため知力や体力だけでなく、状況を覆す機転や敵味方問わず根回しをして協力者を作るコミュニケーション能力が重要になってくるなど、登場キャラクターたちには多角的な能力が求められます。
基本的に血が流れない頭脳戦であり、退学にならない限りは物語から退場することはありません。そのため対戦カードはあまり変わりませんが、登場キャラクターは一筋縄ではいかない知恵者ばかりであり、また敗北が終わりではないため、最終的に誰が勝つか予想できない頭脳戦を繰り返します。
敵クラスとはいえお互いの利益のために共闘することもあれば、共闘しているように見せかけて出し抜こうとするなど、息をもつかせぬ攻防が止まりません。
また学校側はルールを提示しながらも、ルールの穴を突くことを推奨しています。これにより表面上はルールに従いながらも、敵味方それぞれで抜け道を探る、もしくは抜け道そのものを作り出すので、読者が想像した結果を良い意味で裏切ってくれるのが醍醐味の1つです。
生き残るために本性を現す、または暴かれるキャラクターたち
登場キャラクターがとにかく多いですが、モブと言える人物がおらず、新しく名前がついたキャラクターが出てくると、このキャラクターはどんな風に場を乱してくれるのか、と期待感を覚えます。
最初から登場する主人公たちは高校生として成長することもあれば、度重なる過酷な試験をクリアするために今後の人間関係を捨てたとしても行動するので、どんどん立ち位置と人間関係が変化します。
そのため定まったポジションで似たような言葉を言い続けることがなく、前から知っているはずなのに新しい一面が出てくるので読者を飽きさせません。
またキャラクターの言葉を額面通りに受け取れないことがほとんどであり、登場人物たちが騙し合いを行っていると思えば、読者側も騙されていることがあります。
登場人物(黒塗りしたところは重大なネタバレになっているので見る際は注意してください)
綾小路清隆
本作の主人公。
やる気のない性格をしており、その場の空気に合わせて極力目立たないように振る舞っています。
クラスでは目立たない存在であり、また会話の組み立てが下手なので友達を作るのが苦手です。
ただ他者と会話することが苦手なのではなく、人間関係の構築が不慣れなだけであり、知恵を絞った論争で相手を言いくるめることは、むしろ得意分野になります。
親切心で相手に手を貸すことも多く、無害な相手に手を出すような人間ではありません。
何かしらの武術を習っており、身体能力が極めて高いです。
その本性は、他人を駒として見ていることがあるなど、酷く冷酷で機械染みた思考の持ち主です。
上述の親切心はあるものの利用する時は躊躇なく利用するため、人に手を出せない人間ではなく、理由がないから手を出さないだけです。
そのため他者との交流は当たり障りがなく、特に興味がなく邪魔なだけで利用価値がない相手に対しては、手を下しますが見向きもしません。
また利用できる相手の過去や内面に踏み込み、自分に依存させて信頼を勝ち取ることに躊躇がないなど、恐ろしい一面も秘めています。
真の実力は学力、身体能力ともに極めて高く、頭のキレも作中ではトップクラスです。
堀北鈴音
本作の主人公その2
成績優秀で身体能力も高く、作中では多くの人物から容姿を褒められている美少女です。
性格はキツイの一言であり、序盤は高圧的で他人を見下す言動から独りで行動することがほとんどでした。
ただ他人の凄いと感じたことは認め、自分に非があると感じれば謝罪する素直な一面もあります。
総じて良くも悪くも嘘がつけず、相手が不良男子でも物怖じせずに思ったことをそのまま言うので、周囲と喧嘩になることが多いです。
クールに振る舞っていますが、感情的になることも多く、そのまま感情で眼を曇らせば大切なことを見落とすと忠告されています。
一度やると決めたことはやり通す気概があり、任されたことは体調を崩してでもやり遂げようとするなど義理堅いです。
行動力があり、伸びしろが大きいので、まさに成長する主人公と言えます。彼女がAクラスを目指さなければ、物語は動かなかったです。
まとめ
敵だった相手を味方に巻き込んだり、味方だと思っている相手が敵に懐柔されているなど、どんでん返しが続き、それらが急に起こるのではなく早い段階で伏線が張られているなど、何度も読み直すと新しい発見ができる作品です。
気になった方は是非一読してみてください。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません