『魔法使い黎明期』をおすすめしたい!
イントロダクション
『僕は、思い出せずにいる。自分が一体、何なのか』
五百年に及ぶ教会と魔女の対立と、数年前に成立した和平。
だがその影で対立の残滓は、まだ世界の各地に色濃く残っていました。
魔法学校に通う落ちこぼれの生徒『セービル』は、学校入学以前の記憶がありません。
そんな彼に、学長は危険な特別実習を言い渡します。
王国を出て反魔女派の勢力が強い地域で、魔法の有用性を広めてほしい。
もし特別実習で実績を残せなければ、魔法に関する知識も魔法学校を退学になったと言うことすら忘れさせられ、追放されるのが学校のルールになっています。
同行するのは、黎明の魔女『ロー・クリスタス』、秀才少女の『ホルト』、学校唯一の獣堕ち『クドー』といった、個性の強い面々です。
行き先は魔女狩りが行われている地域に作られた『魔女の村』であり、命の保証はありません。
世界がまだ、魔女と魔法を完全に受け入れていなかった時代。何者でもない少年が、心に傷を隠した仲間たちと、自分を見つける物語『魔法使い黎明期』をおすすめしようと記事にしました。
『虎走かける(敬略称)』によるライトノベル。イラストは『いわさきたかし』、一部キャラクターの原案を『しずまよしのり』が担当しています。
ジャンルは『ファンタジー』。
『ゼロから始める魔法の書』の第2部として執筆された作品であり、世界設定が共通しています。また第1部のキャラクターが登場しますが、『間違いなく新シリーズとして書いた』と著者は語っており、今作から読み始める読者に向けられた作品です。
また『ゼロから始める魔法の書』と『魔法使い黎明期』の中間に当たる短編集『魔女と野獣の極めて普通な村づくり』が小説家になろうに不定期更新で掲載されています(内容としては題名通りで、『魔法使い黎明期』の主人公たちが向かう魔女の村で行われるほのぼの村づくりです)。
小説は『講談社ラノベ文庫』にて既刊5巻まで発売中です(2022年5月現在)。
アニメ化が決まった際に、第1~4巻の重版が発表されました。
『タツヲ』による漫画版が『月刊少年シリウス』にて連載中です。
コミックスは『講談社〈シリウスKC〉』にて既刊5巻まで発売されています。
テレビアニメは『株式会社手塚プロダクション』により制作され、2020年4月から放送中です。
またテレビアニメ公式Twitterでは、毎週月曜日18時に原作『虎走かける』、漫画『タツヲ』による漫画企画『学園黎明期』が公開されています。
本作の魅力について、
セービル役の『梅田修一郎』は『キャラクター同士の掛け合いの描き方が特に面白いと感じました。例えばセービルとクドーの掛け合いは、テンポが特徴的なんです。セービルは地で聞きたいことを聞いて、クドーはそのツッコミ役的なところがあって。文章を見ていて二人のテンポ感を想像することができて、読んでいて気持ちいい』
ロー・クリスタス役の『岡咲美保』は『セービルを通して物語が描かれていて、そのテンポ感には愛おしさを感じます。物語も足早に進んでいくわけではなく、自身の状況を理解しきれていないセブ君がロスやホルト、クドーと出会い旅が進んでいく。スローテンポでありながら、物語の根幹も着実に動いていくんです。ひとつひとつの事件はもちろん、一人一人のキャラクターもそれぞれかなり複雑な事情を抱えていて、背景の深さも印象的でした』
とコメントしています。
あらすじ(序盤のネタバレあり)
少年が目を覚ますと、名前は『セービル』という自覚だけを残して、ほとんどの記憶が消えていました。
かすかに残った記憶は、雨の中、薄汚れたセービルを長い外套の中に迎え入れてくれた美しい人の姿だけです。
その人は言いました。
『おいで。君にふさわしい世界へ連れて行こう』
それから3年が経ち、魔法が上手く扱えず、学校で落ちこぼれ扱いを受けていたセービルは、学長に呼び出されました。
退学を言い渡されたらどうしよう、泣き落としをしようにも表情筋が終わっているセービルは、恐怖しながらも学長室へ向かいます。
扉の前では1人の少女がウロウロと歩き回っていました。
杖を手にした少女『ロー・クリスタス(以後ロス)』は学長に会おうとしていましたが、入室を拒まれており、のこのこやってきたセービルをこれ幸いととっ捕まえます。
ひと悶着があった後に、学長と顔を合わせたセービルは、退学を避けるために『特別実習』を受けるよう言い渡されました。
実習先は反魔女派の勢力が強い大陸南部に作られた『魔女がいる村』です。
その村で『どんな形でもいいから魔法使いとしての実績を上げて、報告書を提出する』ことができれば、魔法使いとして学校を卒業することができると学長は言います。
命の危険はありますが、退学したくないセービルに断る理由はありません。
セービルは、強引に『魔女の村』までの引率を買って出たロス、自ら特別実習に参加した優等生の少女『セルト』と共に魔女の村へ旅立ちます。
一方、特別実習生ですが別行動を取っていたトカゲの獣堕ち『クドー』は、魔女狩りのための戦闘集団『デア・イグニス』に襲撃されて窮地に陥っていました。
作風・感想
本作は記憶を失くした主人公セービルが、旅を通じて出会った人たちと触れ合い、過酷な世界の中で成長していく物語です。
魔法使いや半人半獣の獣堕ちが登場するファンタジーな世界観ですが、人間と魔女の差別的な問題が物語に組み込まれているなど、緩やかなテンポで話は進みますが適度な緊張感が漂っています。
会話量が多く、言葉の裏に多くの意味が含まれていることがあり、読み直すと『このキャラクターは本当はこう思いながら話していたんだな』と新たな発見ができるのが特徴です。
精神的に未熟な特別実習生3人が先生から教えを受けて実践しますが、上手く行くこともあれば失敗したり、取り返しのつかないことになりかけるなどシビアなシーンがあります。ただ話がうまくまとめられており、雰囲気は暗くなり過ぎません。
キャラクターの生い立ちから現在に至るまでの過程が早い段階で丁寧に描写されており、各々が抱えている課題がわかりやすいです。そのため下地がしっかりとしており、キャラクターの行動に説得力があります。
またこの人たちと出会ったからこそ、こういう選択をするんだと伝わるので、物語を動かすための装置だと感じることはありません。
登場人物
セービル
本作の主人公。一人称は『僕』。相性はセブ。
魔法学校入学前の記憶がほとんどなく、感情を表に出す方法を知りません。
無表情で思ったことをそのまま口にするので、良くも悪くも正直な性格です。そのため無意識に人を傷つけてしまうことがあり、その度に周囲から教えを受けて、人との関わり方を学んでいきます。
失敗などの原因が自分にあるものとして考える自罰的な一面があり、また記憶喪失ゆえに無知であることが課題です。
魔法使いを目指すのは、それ以前の記憶がないので、退学になって記憶を封じられると何もなくなるから。
魔法は不得意ですが、なぜか彼の近くで魔法を使うと調子がよくなります。
ホルト
元気で明るい少女ですが、笑顔は特技といい、いろんな感情を押し殺して愛想よくしていなければ生きて来れなかった過去があります
思い切りがいい性格で、時々辛辣です。
ある程度なんでもできる優等生ですが経験が少なく、楽観的すぎることが課題になっていきます。
クドー
トカゲの獣堕ち。
いつも怒っており、誰に対しても最悪な態度を取りますが、裏を返せば誰に対しても公平に接する勇気を持っています。
また感情によって体色が変化するため、絶望的に嘘が吐けません。
獣堕ちのため子供の頃から散々な目に遭っており、物事を悲観的に捉えがちです。他人を信じられず単独行動することが多く、それでいて困った人を助けようとするので、1人で無茶をしてしまうことが課題です。
ロー・クリスタス
一人称は『我』
見た目は15歳ほどの少女ですが、実際は300歳を超えています。
世界に魔法が広まるきっかけとなった『ゼロの書』を閲覧したいと思っていますが、禁書扱いなため閲覧することができません。そこで、閲覧はできなくとも著者に会えるという条件で、魔法学校の学長から半ば強引に特別実習生の引率を引き受けました。
年齢の割に子供っぽいところがありますが、300年の時を生きた『黎明の魔女』としての実力は本物です。
人生経験も豊富であり、成り行きでなった『先生』ですが実習生の3人を上手く導いています。
嫌なことは嫌と言い、やると決めたら自分の意思を貫く強さを持っており、娯楽のために心のまま生きながらも、そのためなら命を落としても構わないと言い切りました。
まとめ
キャラクターたちの背景が深く、会話量も多いが、テンポがとても良く読みやすいです。それでいて読み直すと新たな発見があります。
気になった方は是非一読してみてください。
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