『ダンス・ダンス・ダンスール』をおすすめしたい!
目次
イントロダクション
『その男が踊るのを見た時、ガーンって打ち抜かれちゃって、バレエやりたいって思ったんだ』
中学2年生の『村尾潤平(むらおじゅんぺい)』は、幼い頃に目撃したダンサー『ニコラス・ブランコ』に憧れてバレエに魅了されるも、父親が亡くなったことをきっかけにその道を諦め、家族を守れる男らしい存在になろうと格闘技・ジークンドーを習っていました。
しかしサッカー部に入り、クラスの人気者として友人と過ごしながらも、心のどこかではバレエに対する未練を引き摺っています。
ある日、転校してきたクラスメイト『五代都(ごだいみやこ)』にバレエへの興味を見抜かれた潤平は、一緒にやろうと誘われて、都の母親が開くバレエスタジオに連れて行かれました。
最初は悪態をつきながらも通っていた潤平でしたが、次第に長年募っていた情熱と幼少期に抱いた憧れが再熱し、真面目にバレエへ取り組んでいきます。
そして舞踏連盟の発表会である『洋舞祭り』で『白鳥の湖』の王子様役として踊ることになった潤平は、バレエダンサーとなるために『他のものを全部捨てられるか?』と選択を迫られました。
部活、仲間、ジークンドー、家庭という周囲を気にする潤平の前に、バレエの英才教育を受けた孤高の天才にして不登校な中学2年生『森流鶯(もりるおう』が現れます。
すべてを犠牲にしたものだけが立つことを許される世界で、もがき続ける少年少女たち。青春の衝動が、今、ぶつかり合う『ダンス・ダンス・ダンスール』をおすすめしようと記事にしました。
『ジョージ朝倉(以下敬略称)』による漫画作品。ジャンルは『バレエ』
『週刊ビッグコミックスピリッツ』にて2015年から連載中です。
コミックスは 『 小学館〈ビッグコミックス〉』から既刊23巻まで発売中です(2022年6月現在)。
コミックスの累計発行部数は、2022年4月時点で220万部を突破しています。
『マンガ大賞2017~2018年 一次選考作品』『文化庁メディア芸術祭 第23回マンガ部門 審査委員会推薦作品』として選ばれました。
『呪術廻戦シリーズ』や『進撃の巨人 The Final Season』を制作した『株式会社MAPPA』によってアニメ化が行われ、2022年4月から放送されています。
監督はアニメ版『ONE PIECE』2代目シリーズディレクターを務め、『ハートキャッチプリキュア!』では演出を担当し、近年では『ゾンビランドサガ』を手掛けた『境宗久』です。
アニメ版では、バレエシーンをより忠実に再現するために現役バレエダンサーをモーションアクターとして、モーションキャプチャーで撮影を行い、バレエの動きをアニメ作画でよりリアルに表現しています。
モーションアクターには、創立50周年を越えた長い歴史を誇るバレエカンパニー『東京バレエ団』のトップクラスのダンサーが協力しました。
本作の魅力について、
村尾潤平役の『山下大輝』は『潤平を中心に「好きなもの」を好きと言える勇気、そしてその好きをより好きになる為に自分自身を磨き高めていこうとする姿が本当に魅力的で、読んでいる僕自身もお芝居に対しての向き合い方を改めて考えさせられる作品だなと感じました』
森流鶯役の『内山昂輝』は『バレエに励む中学生たちの奮闘のストーリー。主人公である村尾潤平という強烈なキャラクターとの出会いで、周りの人々がどのように変化していくのかも見どころです』
五代都役の『本渡楓』は『バレエと本気で向き合っていく作品なのでやはりバレエシーンはイチオシなのですが、個人的に印象的だった主人公潤平の「キラキラが爆発する」シーンが見所だと思っています』
とコメントしました。
あらすじ(序盤のネタバレあり)
幼いころに姉のバレエ発表会に行き、そこでゲストダンサーの踊りを見た時に『ビリビリビカビカドッカーン』と星が爆ぜるような感覚に襲われた『村尾潤平』はバレエに惹かれるようになります。
アクション監督をやっていた父親は反対しましたが、潤平の熱意に折れてバレエ教室の入会を許可しました。
その矢先、父親が病で亡くなってしまい、家族を守れる『カッコいい男』となるためにバレエの道を諦めて、ジークンドーを習い始めます。
時が経ち、中学2年生になった潤平は陽気で格闘技もできるクラスの人気者として学校生活を楽しんでいました。
『楽しいのに、なんであのビリビリビカビカドッカーンが来ないんだ』
しかしバレエへの未練は完全に断ち切れておらず、転校生の『五代都』に教室で披露していた跳び蹴りが男性ダンサーの大技『540(ファイブフォーティー)¹』であることを見抜かれます。
1……正式名称『カジョール・リヴァルタット』、一回転半するバレエのジャンプ。
『一緒にバレエやろうよ』
都の母親が開くバレエスタジオに連れて来られた潤平は、『バレエなんて男らしくない』と言い訳をしながら帰ろうとしますが、披露したダンスを『バレエではない』と都の母親に言われたことでバレエへの想いが再熱します。
そして、バレエの発表会に出ることが決まった潤平の前に、圧倒的な実力差を持つ『森流鶯』が現れました。
メチャクチャなダンスだが人の感情を揺り動かす潤平、ダンスを見た人を変えてしまうほど本物の力を持つ鶯。
2人は互いに触発されながらも、発表会で『アドリブ』を交えたバレエにより観客を魅了します。しかし審査員からの評価は『とてもバレエとは言いがたい演技や態度。即興的な見せ物やそれに付随する態度も、芸術であるバレエとは異なる性質』でした。
バレエとはいったいなんなのか。潤平のバレエに対する情熱は、否定されても消えるどころか、より一層燃え上がっていきました。
作風・感想
本作は幼少期にバレエを諦めた主人公が、転校生に誘われたのをきっかけに、本気で男子バレエに取り組んでいく青春譚です。
青い主人公たちが紡ぐ、熱を帯びたドラマ
主人公が成長していく中学生の青春ドラマ、爽やかさ、バレエにうちこむ姿のひたむきさ等の『熱血』がつまっています。
中学生である主人公が、バレエにのめり込んでいく時の繊細な感情の動き『青さ』が胸に痛いほど刺さる作品です。
登場キャラクターそれぞれの背景や性格が魅力的であり、人生を感じます。バレエ以外を捨てるか、それとも諦めるか。各々にきっかけとなる過去があり、突き付けられる現在があり、そこから葛藤して未来を選んでいく姿が鮮明に描かれています。
不純な動機でバレエを始めたり、主人公の妨害を行うなど。そういった余分なモノが入る隙間がないほど厳しいバレエの世界が表現されており、登場キャラクターたちのダンスに対する本気度が、熱やパワーとして絵から感じるのが魅力です。
ダンスを知らない、楽しさがわからない状態でも潤平という主人公がどう成長してどう生きていくかが気になり、読者の想像の斜め上を超えていく物語に引き込まれていきます。
成功するとは限らない世界で、過ぎていく時間
後先を考えないリアルな中学生の恋愛も描かれており、ふとしたことで互いを求めたり、不意に別れたりする心理描写が生々しく、また甘酸っぱいです。
バレエシーンは知識がない状態でも、バレエに打ち込むキャラクターたちの想いや努力が下地として物語に組み込まれているので、迫力が伝わってきます。
物語は中学生から始まりますが、刻一刻と残酷に時が進み、舞台がどんどん変わっていきます。未来に対する期待と同じぐらいに、現実の厳しさや不確定な将来に対する不安があり、この先登場キャラクターたちがどうなってしまうのか、まったく予測できません。
登場人物
村尾潤平
本作の主人公。中学二年生。
ウルトラソウルな底抜けなポジティブであり、時々周囲が引くような好意的解釈をします。
コミュニケーション能力が異様に高く、海外でもほとんど日本語で回りと通じ合っていました。どんな環境でも周囲の人間と仲良くなれる反面、周りを気にするタイプであり、幼少期にバレエを諦めた原因にもなっています。
またコミュニケーション能力が高いがゆえに、良くも悪くも人たらしです。特に女性関係では悪い部分が顕著に出ており、他人との距離感が近いうえに、本人は惚れっぽい部分があるなど相手をその気にさせたり、勘違いさせることがあります。しかも本人は最終的にバレエを選んでしまうため、女性関係問わず相手の気持ちを裏切ってしまうことが多いです。
バレエに関しては残酷なほどの才能、憎たらしいぐらいうらやましいと言われるほど『センス、身体能力、スタイル、勘の良さ、洞察力、判断力、陽気で明るい人を惹きつける力』に優れていますが、ダンスをやるまでの期間が長く正しい基礎がまったくできていないので、インパクトは感じてもらえますが、酷評されることがほとんどです。
本人も幼い頃からバレエをやっていないことをコンプレックスに感じていますが、それゆえにどんな努力も惜しまない強い意志、急成長につながっています。
ただジークンドーをやっていたことで身体ができているなど決して無駄にはなっていません。父親の影響で映画をよく見ていたからか、最初から本当に傷つくぐらい役に入り込める才能を持っていました。
型破りな言動の割に、レッスン中に注意されても悪態はつきますが反発はせず、自分の失敗を振り返って次に活かすなど驚くぐらい真面目です。しかし街中で踊ったり、美術館の絵のイメージでいちいちポーズを取るなど、人として超えてはいけないギリギリの一線を越えたアホであり憎めない天才とも言われています。また5分先のことを考えずに動くので周囲の度肝を抜くことが多いです。
中学生時代は女子より背が低いものの、バレエに望まれている脚の形をしており、手足が長く指先も長い、足も大きくて甲もあってバレエ向き。頭も小さく首も長い。顔もだまっていればなかなか。意外とプロを目指す条件はそろっていると言われています。
森流鶯
ロシア人と日本人のクォーター。
母親は一世を風靡した清純派アイドルでしたが、19歳の時に起きた流出写真で大炎上スキャンダルを起こしています。
幼少期は祖母に引き取られ、ほぼ幽閉状態でバレエの英才教育を受けました。学校にも行かせてもらえなかったのでコミュニケーション能力に問題があり、四歳の頃から日本に住んでいますが、電車に乗れず漢字が読めません。
小学4年生の時点で、こんなにしなやか子はいない、こんなに音楽に寄り添っている子はいない。こうまでバレエという国の住人たる空気を纏う子はいない。と評されており、あなたにとって『ダンスは生きること』と言われています。
同年代の中では屈指の実力者であり、バレエを知らない人間の心さえ動かし、大きな夢を語っても妄言にならない本物を持つ王者です。
一方で負けず嫌いな性格を刺激されて、奥底に眠る闘争心に火が付かなければ真剣になれないなど素行に問題があり、プロ入りは難しいと評されています。
まとめ
男子バレエがメインの漫画ですが、悩み、他者と関わり、成長していく青春漫画でもあります。
気になった方は是非一読してみてください。
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