プラネタリウムについて気になったので調べてみた

プラネタリウムとは

惑星という意味の『プラネット』と、何かを見る場所という意味の接尾辞『アリウム』が合体した言葉らしく、意味合いとしては『惑星を見る場所』です。

ドーム内中央部に設置された投影機から、閲覧者を覆うドーム状の天井の内側に設置された曲面スクリーンに向けて、星の像およびその動きを再現する設備、もしくは施設を差します。

『プラネタリウム』『プラネタリュウム』『プラネタリューム』『天象儀(てんしょうぎ)』とも呼称されます。

『プラネタリウム』はその名の通り、惑星に由来する言葉ですが、星空全体を再現します。
また『ひと晩の星空の変化』『季節の移り変わりによる差異』『日食や流星群、彗星』のような天文現象を再現する場合もあります

プラネタリウムの前史

古代ギリシャの数学者であり天文学者でもあった『アルキメデス』が、『太陽・月・惑星の運航を再現する装置』を所持していたとされます。

また紀元前3世紀から紀元前1世紀の間に、天文学者でもある『ポセイドニオス』が、太陽や月に加えて、火星、水星など惑星の位置を示す機械『アンティキティラ島の機械』を組み立てたとされており、上記の『アルキメデス』が作った装置との関係性も示唆されています。

『アンティキティラ島の機械』が沈没船から回収された1901年当時でも、かなり複雑な機械であり、その重要性は何十年も気づかれず、長らく価値が不鮮明でした。

『アンティキティラ島の機械』は世界最古のアナログ機械とされており、イギリスの国立大学で研究を行っている教授が『モナ・リザ』より価値があるというほど、その分野では抜きんでていたそうです。

なお沈没船に乗っていた経緯は不明とされていますが、一説では『ガイウス・ユリウス・カエサル』による凱旋式で本機を称えようと、ローマに運ぶ際中にその他の財宝諸共沈めてしまったとされています。

他には、13世紀にイタリアの数学者『ヨハンネス・カンパヌス』太陽系儀(地動説を基にした太陽系の模型)を建設しました。

14世紀には、時計の設計と製造技術のパイオニアである『ジョバンニ・デ・ドンディ』が天文時計であるアストラリウム時計を完成させました。

18世紀初期に、近代的な太陽儀である『オーラリー』がイギリスの時計師である『ジョージ・グラハムとトーマス・トンピョン』によって作られました。この装置は小型で迫力が欠けていたらしく、18世紀末には複数の教育者たちが『大型の天界を再現する装置』を造ったとされています。

現存して、なおかつ作動する最古の太陽系儀は、アマチュア天文学者である『エイセ・エイシンガ』が作ったモノであり、オランダに保管されています。

日本では江戸時代末期に『東洋のエジソン』とも呼ばれた『田中久重』により、京都から見た1年間の太陽と月の動きを再現する機構が組み込まれた『万年自鳴鐘(まんねんじめいしょう)』が制作されました。

プラネタリウムの歴史(海外)

世界初の近代的なプラネタリウムは、ドイツのミュンヘンにあるドイツ博物館長『オスカー・フォン・ミューラー』の発案によって、ハイデルベルグのバーデン天文台の主任研究員であった『マックス・ヴォルフ』が設計したモノを、イェーナにあるカール・ツァイス社に依頼して、技師である『ヴァルター・バウアースフェルト』が開発した『(カール)ツァイス1号』という投影機です(1923年)。

その後、改良が加えれて、1925年に一般公開されました。

この『ツァイス1号』の時点で、5つの惑星の運行と。約4500個の恒星が投影可能です。また恒星原板(星の配列を記録したモノ)とレンズで、ドーム内に星を投影するという、現在の光学式プラネタリウムの基本的原理はこの時点でほぼ完成しています。本機は現存しており、ドイツ博物館に収蔵されています。

プラネタリウムの歴史(日本)

アジアで初めて設置されたプラネタリウムは。1937年に(のちの大阪市立科学館となる)大阪市立電気化学館に設置されたカール・ツァイス社製の『ツァイスⅡ型』です。

日本国産としては、1958年に発明家『信岡正典』が開発したものが第1号です。ただし、同時期に複数の発明家が出展しており、論議の余地があります

全世界にプラネタリウム館は約2700館あるとされていますが、プラネタリウム機器を扱う会社は世界に数社しかありません。その内、約半数近いシェアを抱えているのが、日本にある後藤工学研究所と、コニカミノルタプラネタリウムです。

日本のエンジニアである『大平貴之』が個人で開発した『メガスター』は、従来比の100倍に相当する150万個の恒星を再現しており、1998年にロンドンで公開された際は、世界の専門家たちを仰天させました

この『メガスター』シリーズはギネスワールドレコーズに認定されており、この制作過程を含んだ自伝は、後にテレビドラマ化されました。

プラネタリウムの形式

星を映す形式には、複数の種類があります。

ピンボール式レンズ式に大別される光学式

ピンボール式は、中央に置いた電球から出る光を、星に合わせて穴を開けたカバーで囲い、スクリーンに移す形式です。
構造としては簡単なので、豆電球と段ボールで再現可能らしく、学校の教材としても用いられます

 

レンズ式は、上述の『恒星原板』を使います。これに光を当てて、レンズでスクリーンに投影します。『ツァイス1号』もこの方式です。映し出される星は、ピンボール式より小さくて本物に近いですが、軽量化・小型化・低価格化が難しいそうです。
現在のプラネタリウム投影機の主流を成している形式であり、制作しているメーカーは日本に3社、海外に1社だけです。

ビデオプロジェクターを使うデジタル式

1台、または複数のビデオプロジェクターを使って、ドームに映像を投影する形式です。
レンズ式と比べて、『恒星原板』がないため、解像度や輝度が劣っています。しかし、宇宙映像を様々な視点から映し出せるため、表現力が上がります。
最初に開発されたのは、アメリカの企業エバンス・アンド・サザランドの『デジスター』です。

 

上記2つを合わせたハイブリット式。

双方の利点を併せ持っていますが、複数の機器が必要かつ操作方法も複雑で、導入および運用面でコストが上がります

しかし、多様な投影と柔軟な表現ができることからハイブリット式を望む声は多く、旧式化した投影機を入れ替える際に、ハイブリット式を導入する施設が増えています

プラネタリウムのドーム形状について

ドームの形状は、水平式傾斜式に大別されます。

・水平式は、おわんをかぶせた形です。野外で地上から見上げる星を体験できます。

・傾斜式は、そのおわんを僅かに傾けて、座席を階段状に設置します。これにより、どの座席でも見やすく、また宇宙にいるような臨場感が味わえます。

プラネタリウムの上映について

プラネタリウムは、天文台、科学館、博物館に併設される形が見られます。今では集客目的で商業施設に設置されることも多いです。

上述した星を投影することや、天文現象の他に、施設によってはアニメーションの上映、CDもしくは生演奏が行われます。

後者は天文学習というよりは、癒しが目的です。その中には、ヒーリング効果のある香りを発生させる装置が設置されている施設もあります。

まとめ

プラネタリウムにも、色々と種類があることを初めて知りました。

鑑賞中は、みんなで星空を楽しめる用に、気をつけましょう。

 

参考文苑
・大平貴之『プラネタリウムを作りました。:7畳間で生まれた410万の星』エクスナレッジ、2003年。ISBN 4767802512。
・日本プラネタリウム協議会、会報
・プラネタリウム製造各社の技術資料