
原作:むちまろ(週刊少年マガジン・講談社)
巻数:既刊13巻(連載中/累計270万部突破)
アニメ:2026年10月3日(土)24:30〜 TOKYO MX・BS11ほか
タイトルで完全に誤解される漫画があります。『生徒会にも穴はある!』は、そのいちばんわかりやすい例かもしれません。検索してみると「これは何系の漫画なのか」「エロ漫画なのか」という質問がずらりと並びます。書店で手に取るのをためらった人も、きっと少なくないはずです。
結論から言うと、これは週刊少年マガジンで連載中の学園コメディ4コマです。下ネタは確かに多いです。ただ、その下ネタが何のために置かれているのかを作者と担当編集が明言していて、それを知ったうえで読むと、同じページがまったく違う顔を見せます。2026年10月3日からのアニメ放送を前に、魅力をお伝えする記事です。
生徒会にも穴はある!ってどんな作品?
ジャンルは学園コメディ。基本は4コマで進み、ここぞという場面では通常のコマ割りも混ざる形式です。作者のむちまろさんは2020年にデビューし、本作が2作目の連載です。累計発行部数は270万部を突破し、「次にくるマンガ大賞2023」ではコミックス部門の1位を獲得しています。
舞台は私立藤成学園。主人公の水之江梅は高等部1年で、国語の成績は抜群なのに理系科目が進級に響くほど壊滅的という、少し偏った文学少年です。内申点を上げるために生徒会の役員になった彼を待っていたのは、カリスマむっつりの生徒会長、怖いけれど優しい清楚な会計、生意気でかわいい男の子、小さな捨て猫のような庶務という、揃いも揃って一癖ある面々でした。
物語らしい物語はほとんどありません。生徒会室で誰かが何かをやらかし、梅がツッコみ、また次の話が始まる。その繰り返しです。ただ、そのやらかしの多くが下ネタ方向に振り切れているので、初見だと「これは人前で読んでいい漫画なのか」と身構えることになります。
ここで先に言っておくと、下ネタは全体のトーンであって、目的ではありません。むちまろさん自身が、下ネタを何のために描いているのかを一語で説明しています。次の章で、その言葉から見ていきます。
主要キャラクター紹介
生徒会のメンバーは6人。それぞれの壊れ方がきれいに噛み合っていて、誰か一人が欠けても話が回らない編成になっています。アニメのキャストコメントもあわせて紹介します。
水之江 梅(CV:坂田将吾)
生徒会書記。高等部1年で、文学にしか興味がなく、入学当初は周囲から少し浮いています。生徒会に入ってから変わっていくのは彼のほうで、演じる坂田将吾さんは、みんなと接するうちに成長して人の温もりを知り、「果てにはツッコミモンスターと化してしまいます」と語っています。生徒会でいちばん常識的な人物であり、だからこそいちばん苦労する役回りです。
古都吹 寿子(CV:白石晴香)
生徒会長を務める高等部3年。真面目にやろうとしているのに、どこか抜けた人です。そして作中屈指のむっつり。白石晴香さんは初めて原作を読んだとき「こんなにコミカルなスケベが存在するなんて!!と、衝撃を受けました」と振り返りつつ、そういうところも愛おしく感じるキャラクターだとコメントしています。会長の暴走は、この作品のギャグの主要な燃料です。
陸奥 こまろ(CV:富田美憂)
生徒会庶務で、梅と同じ高等部1年。原作ではセリフの字体からして他のキャラと違っていて、声がガサガサであることが絵で示されています。富田美憂さんはそのハスキーな声を活かせるときが来たとコメントしていて、原作の表現がそのまま音になる珍しいケースです。詳しくは後述しますが、この作品は、実はこまろから作られています。
尾鳥 たん(CV:河野ひより)
生徒会広報。中等部3年で、生徒会でただひとりの後輩にあたる男の子です。河野ひよりさんはオーディションの時点で絶対に演じたいと思ったそうで、「ウザいけど憎めない、知れば知るほど可愛く見えてくるたんの魅力が大好きです!」と語っています。第一印象と読後の印象がいちばん変わるキャラクターです。
照井 有栖(CV:石上静香)
高等部2年で、生徒会の会計。石上静香さんの表現を借りれば「スレンダー怪力美少女」で、いつもニコニコと生徒会を見守っています。基本はツッコミ担当ですが、ボケにも回ります。怖さと優しさが同居していて、梅にとっては数少ない味方です。
平塚 敏深(CV:内山夕実)
高等部1年2組の担任で、学年主任を務める先生。生徒たちに囲まれながら独特の存在感を放ちます。生徒会の面々とは違う距離から場を見ている人物で、作品の成り立ちを語ったインタビューでも、こまろや梅たちと並んでこの平塚先生が生まれた経緯に触れられています。生徒会の6人でただひとりの大人で、ばか騒ぎに教師の視点がひとつ挟まる配置になっています。
ここがすごい!おすすめポイント4選
① 「エロは道具」── 下ネタはキャラを見せるための手段
マガポケの新人漫画家向け企画インタビューで、むちまろさんは打ち合わせの中で出てきた言葉としてこう紹介しています。「エロは道具」。続けて、「エロのためのエロではなく、エッチな展開はキャラクターの可愛いところや個性を引き出すためのものであるという感覚です」と説明しています。
これは建前ではなく、描き方の手順そのものです。同じインタビューで挙げられているのが、会長が悶々とする場面の描き分けでした。「女の子が悶々するのはとてもエッチだ」と考えて描くと、どう見せるかに意識が向いて青年誌寄りの絵になる。けれど「会長ならこんなことが起きたら悶々としちゃうよね」と考えて描くと、同じ場面がキャラクターの個性を理解できるシーンに変わる。シチュエーション優先ではなく、キャラクター優先で描く。この一線が、作品全体の手触りを決めています。
だから読んでいて、下ネタの場面で置いていかれる感覚がほとんどありません。何が起きているかより、そのときその人がどんな顔をするかのほうに目が行くように作られているからです。
② こまろから逆算して組み立てられた作品
この作品は、世界観やあらすじから作られていません。最初にあったのは、むちまろさんが自画像としてSNSに描いていた一人のキャラクターでした。DMMブックスどくしょ部のインタビューで、担当編集の平塚さんはその子を、小さくて、可愛くて、不憫で、でも幸せに生きている存在だったと振り返っています。そこから膨らんで生まれたのが、陸奥こまろです。
次に作られたのが主人公の梅でした。平塚さんの言葉では、梅は「こまろちゃんの隣にいるなら、こんな人であってほしい」というむちまろ先生の願いの固まりのような子だといいます。さらに、この二人を愛してくれる人がいてくれたら、この二人とは違う何かを抱えた愛おしい人がいてくれたら、という発想でたんや有栖、会長、そして平塚先生が生まれていきました。
キャラクターが物語に配置されたのではなく、一人のキャラクターの居心地から順に人が増えていった作品です。生徒会室の空気があれほど居心地よく見えるのは、たぶんこの順番のせいです。
③ 笑ったあとに、関係の温かさが残る
むちまろさんの前作は『世が夜なら!』という作品で、こちらは売上が伸びずに一度幕を下ろしています。その反省から、担当編集と作者が話し合って物語の軸を動かしました。前作で伝えようとしたのが「笑える」だったのに対し、新作では「愛おしい」のほうに注目して日常コメディをやろう、という決定です。笑える出来事を経てもなお頑張って生きている様子の愛おしさまで届けたい、という狙いが最初から置かれていました。
その狙いは届いているようです。「次にくるマンガ大賞2023」でこの作品に投票した人たちの声について、平塚さんは、ギャグの裏にある関係性の温かさが伝わってほしいという願いがまさにそのまま返ってきたものだった、と語っています。1位という結果は、下ネタが受けたからではなく、その奥の部分が読まれた結果だと見ているわけです。
実際、笑わせにきている回の直後に、何気ない優しさが差し込まれる構成が繰り返されます。落差で泣かせにくるのではなく、ずっと同じ温度で、ただ笑いの分量が入れ替わる感じです。
④ 4コマなのに「間」で読ませる
4コマ漫画は構造上、リズムが単調になりやすい形式です。本作が飽きさせないのは、コマ割りの精度によるところが大きいと思います。むちまろさん自身、最後まで気にしているのは「間」だと語っていて、ここに一拍あったほうが気分よく読める、というリズムを吹き出しの位置まで含めて調整しているそうです。
その感覚は独学で身につけたものだといいます。連載が決まったときに勉強しなければと考えて多くの漫画を読み、コマ割りや吹き出しの位置がいいと感じたものから学んだ。名前が挙がっているのは石黒正数さんの『それでも町は廻っている』、五十嵐正邦さんの『川柳少女』、あずまきよひこさんの『あずまんが大王』です。日常ものの呼吸を代表する並びで、あの読み心地がどこから来ているのかがよくわかります。
表情についても、恥ずかしそうな顔ならもっと恥ずかしそうな顔はないかと推敲を重ねる、という話をしています。登場人物の顔がやたらと雄弁なのは、そこに時間がかけられているからでしょう。
この漫画の面白さは、同じ面々が同じ部屋で過ごした時間の蓄積のほうに出ます。梅が最初どれだけ他人だったかを覚えているほど、あとの巻の何気ないやりとりが効いてきます。1話完結の4コマなので1冊ずつでも読めますが、まとめて追ったほうが差がつくタイプです。既刊13巻、電子なら1万円ほどで揃います。
アニメ情報
アニメーション制作はパッショーネ。スタッフには日常コメディとラブコメの実績を持つ面々が並んでいます。
| 放送開始 | 2026年10月3日(土)24:30〜 |
|---|---|
| 放送局 | TOKYO MX・BS11・群馬テレビ・とちぎテレビ(毎週土曜24:30〜) |
| 原作 | むちまろ(週刊少年マガジン・講談社/既刊13巻・連載中) |
| 監督 | 龍輪直征(『大室家 dear sisters / dear friends』) |
| シリーズ構成・脚本 | 横谷昌宏(『負けヒロインが多すぎる!』) |
| キャラクターデザイン | 今村亮(『お兄ちゃんはおしまい!』)/総作画監督兼任 |
| アニメーション制作 | パッショーネ |
| オープニングテーマ | 三月のパンタシア「風の中は走るっきゃないっ!」 |
| 配信 | 2026年9月時点で未発表 |
シリーズ構成の横谷昌宏さんは、原作を初めて読んだときの驚きをこう書いています。「ギャグとエロとエモ。本来なら相性が悪い(とずっと勝手に思い込んでいた)この3つが完璧に共存し、更に相乗効果を高める。初めて原作を読んだときの衝撃は忘れません」。シナリオ会議では「これ本当に放送できるんですか?」と何度も確認したとも書かれていて、原作の再現に振り切る構えがうかがえます。
キャラクターデザインの今村亮さんも、むちまろさんの画力で描かれる人体やフェチさがつまった絵と、それぞれのキャラクターらしさをアニメーションにどこまで定着できるかが使命だと語っています。絵柄の再現度が、そのまま面白さの再現度になる作品です。
よくある疑問に答えます
これはエロ漫画ですか?
いいえ、少年誌の学園コメディです。下ネタとお色気の描写は多いですが、直接的な性描写を売りにした作品ではありません。担当編集の平塚さんは、少年誌として超えるべきでないラインとして「直接的なエロをメインの商品にしてはいけない」という基準を挙げたうえで、キャラクター描写を突き詰めた結果として生まれる描写は少年誌でも問題ないと説明しています。
編集部の側にも、はっきりした線引きがあります。「キャラがやらなさそうなことだけは絶対にやらせないよう心がけています」という平塚さんの言葉です。裏返せば、そのキャラがやりそうなことはどんなことでもしっかり描く。だから過激に見える場面でも、キャラクターから外れた展開は出てきません。平塚さん自身、手に取りづらいのは現状のブランディングの課題だとしたうえで、「下ネタ要素はあるけど、誰が読んでも面白い漫画」として受け止めてもらえるよう頑張りたい、と語っています。
原作は何巻まで出ていますか?どこから読めばいいですか?
2026年8月17日発売の13巻までが刊行済みで、連載は現在も続いています。1話完結の4コマが中心なので、どこから読んでも成立はしますが、1巻から順に読むのがおすすめです。梅が生徒会に馴染んでいく過程そのものが読みどころで、キャラクター同士の距離が縮まる順番を追えるのは最初から読んだ人の特権になります。
電子版は1冊792円で、13巻すべてでも1万円ほどです。アニメが始まる前に通しで追っておく分量としては、そう重くありません。
アニメの配信はどこで見られますか?
2026年9月時点で、公式サイトに配信サービスの情報はまだ掲載されていません。放送開始が近づくにつれて発表される見込みなので、視聴方法を決めたい方は公式サイトの発表を待つ形になります。
「生穴る」とはなんと読むのですか?
作品の略称です。ただし読み方は定まっていないようで、照井有栖役の石上静香さんもアニメ化のコメントで、略称が『生穴る』らしいと紹介したうえで「読み方って……なま?せい?どっちなんでしょう?」と書いています。公式の場でキャストが疑問を投げている状態なので、現時点では好きなほうで読んでよさそうです。
こんな人におすすめ!
- 学園もののゆるい日常コメディを、笑いの密度高めで読みたい方。生徒会室という狭い箱の中だけで、これだけ話が回るのは4コマならではです
- 下ネタがあっても、下品さより愛おしさが残る作品を探している方。悪意で誰かを笑いものにする方向には行きません
- キャラクターの表情が良い漫画が好きな方。恥ずかしそうな顔ひとつに推敲を重ねるタイプの作家です
- 『ぐらんぶる』のような振り切ったコメディや、学園ラブコメの空気が好きな方にも合います
まとめ:タイトルで損をしている、ただのいい漫画です
『生徒会にも穴はある!』は、タイトルと表紙で警戒されて、中身にたどり着いてもらえないまま損をしてきた作品だと思います。実際、担当編集自身がそれをブランディングの課題だと認めています。けれど読んでみると、そこにあるのは下ネタの見本市ではなく、変な面々が変なまま同じ部屋にいることを許し合っている、居心地のいい生徒会室です。
エロは道具である、という作者の言葉は、この作品を読むための鍵になります。笑わせにくる場面ほどキャラクターの素が出るように設計されていて、読み終わったときに残るのは場面の過激さではなく、その人がどんな顔をしていたかのほうです。次にくるマンガ大賞で1位を取ったのは、たぶんそこを読まれたからでしょう。
アニメは2026年10月3日から。原作は13巻まで出ています。タイトルで一度スルーした人こそ、1巻を開いてみてほしい作品です。
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作者のコトバノリアキさんも、本作と同じ担当編集がSNSで見つけて声をかけた作家です。既刊12巻・連載中。

生徒会にも穴はある! 1巻から読むのが王道です。梅が生徒会に流れ着いたところから始まるので、あの部屋の空気ができあがっていく順番を最初から追えます。アニメ放送前に通しで読むなら、既刊13巻をまとめて揃えてしまうのが早いです(電子は各巻792円)。

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