『彼女、お借りします』をおすすめしたい!
目次
イントロダクション
『生まれて初めてできた彼女だったのに…』
都内の大学の経営学科に通う20歳の大学生『木ノ下和也(きのしたかずや)』は、同じ大学に通う『七海麻美(ななみまみ)』と付き合いましたが、1か月でフラれました。
ショックのあまり2日ほど眠れず、和也は寂しさから偶然見つけたレンタル彼女『Diamond』に応募します。
レンタル彼女(もしくは恋人代行サービス)は依頼客から指名されたキャストが恋人役になり、デートの相手をする派遣型接客サービス業です(密室NG、ボディタッチも原則禁止、プール・海など肌の露出をともなう場所へ行く、強要する行為も禁止)。
当日、待ち合わせ場所に現れたレンタル彼女『水原千鶴(みずはらちづる)』はスタイルも良く、身だしなみも完璧な『理想の彼女』でした。
本来はレンタルしている間だけの関係ですが、祖母が急病で倒れたり、偶然知り合いと遭遇するといった事故が重なる度に、和也は見栄を張るために千鶴が彼女だと嘘をついてしまいます。
本来『レンタル彼女』が利用者のプライベートに深く関わるのはご法度なので、和也と縁を切りたい千鶴でしたが、同じ大学に通い、同じアパートの住人であることが発覚したため、ずるずると関係が続きます。
和也から『レンタル彼女』のバイトがバレるのを避けるために、千鶴は『ちゃんと別れたと周囲に説明するまでレンタル彼女として付き合い、それ以降は関わりを持たない』という約束をして、嘘のカップルになりました。
しかし、千鶴の正体を知る『更科るか(さらしなるか)』、千鶴の後輩レンタル彼女だが極度の人見知り『桜沢墨(さくらさわすみ)』、更には歪んだ執着心を見せる元カノ『七海麻美』が現れ、様々なイベントを通じてレンタル彼女と顧客である2人の関係は少しずつ変わっていきます。
職業は理想の彼女。リアル輝く『レンタル』ラブライフ、ドキドキの無鉄砲ラブストーリー『彼女、お借りします』をおすすめしようと記事にしました。
『宮島礼吏(以下敬略称)』による漫画作品。ジャンルは『ラブコメディ』。略称は『かのかり』。
『週刊少年マガジン(講談社)』にて2017年32号から連載がスタートしました。
コミックスは『 講談社〈講談社コミックス〉』にて既刊26巻まで発売中です(2022年7月現在)
シリーズ累計発行部数は1000万部を突破しています。
同作者のスピンオフ作品として、コミュ障ヒロイン『桜沢墨』の日常の奮闘を描く『彼女、人見知ります』が既刊三巻まで発売中です。
アニメ化もされており、『株式会社トムス・エンタテインメント』によって制作され、第1期が2020年7月、第2期が2022年7月から放送が開始されました。
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またテレビドラマ『彼女、お借りします』も2022年7月から放送されています。主演は『大西流星(木ノ下和也役)』『桜田ひより(水原千鶴役)』です。
本作の魅力について、
水原千鶴役の『雨宮天』は『千鶴目線のため、序盤はしっかりしていないにもほどがある和也に対してイライラが止まりませんでした。千鶴に頼らない決心を何度もして、でも困った時は泣きついてくるので、悪口が止まりません(笑)。そんな和也ですが自分の道が見えてきて、回を重ねるごとに成長してブレなくなってくるんですよ。ですから決してイラついたまま終わることはないので、その先に待つ熱い人間ドラマとキラキラした青春を楽しみにしてください』
とコメントしています。
あらすじ(序盤のネタバレあり)
都内の大学で親からの入学祝い金『100万円』を食い潰すダメダメ大学生『木ノ下和也』は、初めての彼女にたった1ヵ月でフラれてしまいました。
やけっぱちになった和也は、寂しさを埋めるためにたまたま見つけた『レンタル彼女』に応募します。
翌日、待ち合わせ場所に現れたのは、清楚可憐な美少女『水原千鶴』でした。
和也は事務的なお金のやり取りをしてから千鶴と水族館デートを始めます。最初はお金を渡す時に『何やってんだろう俺』と気持ちを萎えさせていましたが、別れ際にはすっかり千鶴の虜になっていました。
アパートに帰った後も興奮が覚め切らない和也は『レンタル彼女・水原千鶴』について調べます。すると『水原千鶴に虜のスレ』に辿り着き、そこの書き込みからデート中の姿は演技であることを知りました(当たり前)。
逆ギレした和也は満足度☆1をつけ(レビューが下がると依頼客が減るので営業妨害になる)、もう一度会って一言言ってやろうと2回目のデートを申し込みます。
そして2回目のデート中に、プロとして和也が好む格好や知識を学んできた千鶴に対してフラれた八つ当たりを繰り返し、人目の在る中で『一日だけの付き合いなのに、すぐ別れるんだから、いくら相手を想っても無駄じゃん!』と叫びました。
脳裏を過ぎるのは、元カノの姿でした。好きでもねぇのに、どいつもこいつも恋人ごっこしてんじゃねぇよ。と言い切った感じの和也でしたが、当然ながら千鶴に怒られます。
その恋人ごっこが『レンタル彼女』であり、利用規約に同意してお金を払ったのは和也だからです。
ド正論を受けて我に返った和也に、千鶴は『レンタル彼女』を続けるか問います。
その時、和也のスマホに祖母が倒れたという連絡が入りました。
入院先に訪れた和也は、(契約時間が残っているのでついてきた)千鶴との関係を家族に問われ、つい見栄を張って彼女だと言ってしまいます。
打ち合わせはまったくしていませんでしたが、千鶴は和也の彼女としてしっかり挨拶しました(プライベートに踏み込まない範囲で、レンタル彼女を家族に紹介したい顧客が多いので慣れていた)。
病室の前で和也は、嘘でも祖母を安心させたかったこと、元カノに未練が残っていることを千鶴に話します。そして今のままでは駄目だと思い、これからは嘘や他人の力を借りるのではなく、自分の力で本物の彼女を連れてくると決心しました。
良い話風でしたが、一日を通して和也の恥ずかしい自己陶酔に巻き込まれた千鶴にとってはたまったモノではなく、頬を引っ叩かれます。
しかし、別れ際に『寂しくなったらまた呼んで』と彼を勇気づけるように微笑みました。
後日、元カノが男と話す姿に闇落ちしそうになりながらも、友達と笑い合う前向きな大学生活を始めた和也の前に、偶然同じ大学に入学してきた千鶴が現れます。
作風・感想
本作は、中身ダメダメな主人公が職業『最高の彼女』から恋や人間性を学び、成長していくラブコメディです。
作中のキーワードである『レンタル彼女』の描写は、『宮島礼吏』自身が実際にレンタル彼女とデートを行い、その経験が反映されています。
主人公はダメダメ?
主人公である『木ノ下和也』は頼りなく優柔不断で見栄っ張り、しかもスケベで芯もぶれぶれという未完成の状態からスタートします。ただ序盤から大切な人のために頭を下げるなど、例え悪い方向だったとしても全力で馬鹿正直に動く姿が描かれており、そこから男友達や千鶴たちに支えられ、良い方向に走り出して見直されていくのが魅力の1つです。
また作者の指針で主人公が『クズ』にならないように、やむを止まれずやったという状況によく追い込まれています(ラッキースケベ含むなので、うらやまけしからん)。
ヒロインたちは可愛いけれど……
ラブコメディですが、性的興味や気持ちが高ぶったり冷めたりする大学生の恋愛観の生々しさ、『女の子の可愛いんだけど何を考えているのかわからない』部分が違和感なく物語に織り込まれており、伏線や予兆はしっかり張られているものの、ヒロインたちが急に動き出すので妙な緊張感が常にあります。
登場キャラクターたちは、漫画作品として『好き好き言ってくれる後輩っぽいキャラ』『口下手キャラ』といった可愛く感じるポイントを抑えていますが、どのキャラクターもリアルな一面を持っており、女性キャラに関しては女心の少し陰湿な面もキチンと描かれているので少し怖いです。
キーワードはレンタル彼女
『彼女、お借りします』の恋愛劇の特徴として、恋愛経験の浅い和也が本当の好きについて思い悩んだり、情に流されて和也の『レンタル彼女』になった千鶴の心情の変化があります。
またキーワードである『レンタル彼女』が関係を複雑化しており、レンタル彼女と顧客による『恋愛ごっこ』という先入観が2人の間に壁として挟まっているので、『すれ違って進展しない恋愛』の描写が自然です。
各キャラクターに焦点を置いた話も多く、どうして今のような性格や立ち振る舞いをするようになったのか、しっかりとした背景が用意されており、キャラクターにのめり込むことができます。
登場人物
木ノ下和也
本作の主人公。20歳。
優柔不断な性格で、下心も強く女性の身体を馬鹿正直に眼で追います。
祖母を安心させるためならまだしも、優越感を得るために、男友達に対して千鶴が彼女だと嘘をついています。それが原因でトラブルに見舞われたり、周りに対して罪悪感を抱き続けるという自業自得な目に遭うことが多いです。
物語序盤は自分の行動に酔いしれて周囲の状況が見えなくなったり、一度決めたことを破る言葉の薄っぺらさ、その場しのぎのために嘘を重ね続ける、複数の女の子の間で心揺れ動くといった、典型的なモテない男感が前面に出ています。しかし、迷惑をかけているという自覚はあり、恩返しのために身体を張ることが多いです。
調子に乗りやすい反面、馬鹿であることを自覚しているので自己肯定感が低く、指摘されるとすぐ折れます(単細胞なので復活も早い)。そんな自分ではヒロインたちと釣り合わない、そう考えて少しずつではありますが、自分の理想である人物を見習って変わり始めました。
恋愛面に関しても夢見がちですが、初めての彼女に一ヵ月でフラれたことが傷になっており、肝心な場面で勇気が出ず最後の一押しとなる言葉が出てきません。
涙脆くすぐ顔が赤くなるなど、腹芸がまったくできず、誰に対しても全力で向き合うため、ヒロインたちとの関係をちゃんと考えて清算しようとします。しかし、優柔不断な性格と勇気がない部分が足を引っ張り、ずるずると今の関係を引き摺ってしまいます。
ただ感じたことをそのまま口にすることも多く、他人の凄さに感動して称賛し、馬鹿正直でくさいセリフが相手の心に響くこともありました。
総じて、男の欲望に忠実な面もありますが、馬鹿な部分も含めて素直な性格であり、また大切な人のためなら身を切る行動も辞さない思いやりのある青年です。
水原千鶴(本名:一ノ瀬ちづる)
本作のヒロイン。19歳。
恋人代行サービスを提供する事務所『Diamond』に所属するレンタル彼女。
笑顔を絶やさず、清楚可憐な立ち振る舞いにスタイル抜群と非の打ち所がない美少女です。
新人(フレッシュ)クラスでは人気№1であり、和也がケチをつけるまではレビューも満点ばかりでした。
その成績に決して驕ることなく、何度か自分を指名した相手に合わせて髪型や服装を変え、趣味の話ができるように辞書を買って勉強するなど、プロとして真剣に取り組む『職業・理想の彼女』です。
途中で利用規約に沿わない発言をした和也に対しても、サービス提供する側として注意はしましたが、契約時間が残っている限りは放り出さず、レンタル彼女として振る舞う意志を見せました。
素の真面目さがにじみ出ていますが、デート中の姿は当然ながら『理想の彼女』として振る舞う演技です(ただしその自然さは、わかっていても勘違いしたくなるレベル)。
本来の性格は自他共に厳しく、和也のようなズボラな相手には厳しい発言をしますが、頑張ってコミュニケーションが苦手な自分を変えようとする『桜沢墨』のような相手に対しては、応援の言葉をかけています。
しっかりしていない和也の前ではよく怒鳴っていますが、地は冷静で判断力や適応力が高く、不意な出来事(急に彼女として紹介するなど)に対しても、レンタル彼女のまま完璧な受け答えをしていました。
また情に厚く、他人の苦しみに親身に寄り添える男らしい部分があり、困っている人を完全には見捨てられずできる範囲で応えようとするなど、かっこいいです。
ただ人間だれしも持っている弱さを、そうした強い自分で隠しているため、他人からは『強くしっかりした女性』だと思われており、本人も『完璧な水原千鶴』を意識して形作っています。そのため祖母からは『いつか限界が来た時に、支えとなる人間が傍にいない』ことを心配されていました。
まとめ
『理想の彼女』の演技が解けても、『完璧な彼女』が出てくるという二段構えが読者のハートを掴んできます。序盤は和也のしっかりしていない部分が目につきますが、変わろうとする意志を感じさせてくれる主人公です。
気になった方は是非一読してみてください。
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