『その着せ替え人形は恋をする』をおすすめしたい!
『恋は変える。姿も、心も。』のキャッチフレーズでアニメ化もした
『その着せ替え人形は恋をする』について記事にしました。
明るく趣味を肯定してくれる美少女ギャルと、雛人形制作が趣味の男子高校生が、コスプレ衣装を制作しながら親密になっていくラブコメディです。
『福田晋一(敬略称)』による漫画で『ヤングガンガン』(スクウェア・エニックス)にて2018年3号から連載中(2022年3月24日現在)。
略称は『着せ恋』で、単行本は8巻まで発売中。9巻は3月25日に発売予定です。
2022年1月より、株式会社CloverWorks(主な作品は『ダーリン・イン・ザ・フランキス(TRIGGERと共同制作)』『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』『シャドーハウス』)によりテレビアニメ化されています。
テレビアニメ化の影響もあってか、2022年6月時点で累計700万部を突破しました。
複数の漫画賞にもノミネートされています。『2019年 次にくるマンガ大賞のコミックス部門(6位)』『2020年 電子コミック大賞の男性部門賞』『2020年 全国書店員が選んだおすすめコミック(3位)』『2020年 第4回みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞(6位』。
あらすじ(1話のネタバレを含む)
岩槻の老舗雛人形店『五条人形店』を経営し、雛人形の顔を制作する『頭師』である祖父の影響で、趣味と練習をかねながら雛人形やその衣装を制作する(雛人形に話しかけたりもする)主人公『五条新菜(ごじょうわかな)』は、引っ込み思案で自己主張も苦手な男子高校生です。
幼い頃に仲の良かった友人から、自分の趣味を否定されたことがトラウマになり、雛人形を制作していることや自分の気持ちを言葉に出すことができず、クラスに馴染めない日々を送っていました。
とある日、自宅兼作業場で使っている年代物のミシンが故障した新菜は、被服実習室のミシンをこっそり借りて作業をしていたところ、クラスメイトでいつも友人に囲まれている女子高生『喜多川海夢(きたがわまりん)』が現れます。
動揺のあまり雛人形(頭部分のみ)を手落としてしまい、ついでに話しかけてしまう新菜でしたが、海夢は引くどころか雛人形を褒めたり、ミシンができることに興味津々でした。
新菜にとって、自分とは真逆の世界で生きていると思っていた海菜は、コスプレ願望を抱くオタク趣味の持ち主でした。海夢が被服室に姿を見せたのも、自分でコスプレ衣装を制作するためでしたが、その出来はお世辞にも上手ではなく、新菜の腕を見込んでにコスプレ衣装の制作を依頼してきます。
海菜のコスプレにかける情熱と、自分が好きなモノを褒められた喜び、なにより自分の気持ちを言葉にする勇気を貰った新菜は、衣装制作を引き受けるのでした。
しかし海菜が依頼したコスプレ衣装のキャラクターは、実は大人向け美少女ゲームの登場人物で……
作風・感想
全肯定系の優しいギャルと控え目な男子高校生が仲良くなる、ラブコメディです。
作中ではお色気描写がありますが、話の中心はコスプレ衣装の制作であり、キャラクターの心理描写や人との触れ合いで成長していく過程が丁寧に描かれています。
特に序盤は新菜と海夢以外の登場人物はほとんどおらず、コスプレ制作を通して進む2人の関係や内面が細かくストーリーに反映されています。
自分が好きなことを言葉にできない新菜は感情移入がしやすく、物事をハッキリ堂々と口にできる海夢が引っ張る物語は、女性の読者も楽しめる内容となっており、だんだんと女性読者も増えてきているようです。
専門知識がわかりやすい
話の軸であるコスプレ制作に始まり、雛人形制作や化粧、カメラワークの描写が事細かに描写されています。
かといって初心者に分かり辛い内容ではありません。新菜にコスプレの知識がなく、反対に海夢には人形制作の知識がないことから、詳しくない人でも一から順に説明されるので、わかりやすい内容になっています。
また本作では、雛人形職人やコスプレイヤーのリアルな実態が散見されるのも特徴です。雛人形職人が1日で200から300体のお雛様に化粧をする(顔の一カ所のみ)。コスプレイヤーが木工ボンドを使うこともある。などなど。
作者が『人形のまち』として有名な『さいたま市岩槻区』の人形工房などへ取材にいっており、ストーリー監修にも携わる『株式会社鈴木人形』の当主が新菜のモデルだそうです。また『人形工房 天祥(株式会社公司人形)』が『五条人形店』のモデルとなっているようです。
登場人物
五条新菜
3月21日生まれで『五条人形店』の若旦那。高校一年生。身長は180cm以上と大柄な体格ながらも、自己評価は低いです。
幼少期のトラウマから自分の趣味や気持ちを言葉にできなくなり、自分が会話に参加すれば、場が盛り下がると思い込むようになってしまいました。
それが原因で他者との触れ合いを避けてしまい。小中高とまともな友達がおらず、祖父に心配されています。
一人っ子で両親は早くに失くしており、祖父と2人暮らしです。
家事は一通りこなせて、料理の腕も高く、海夢から高評価を受けています。
性格は他の登場人物から度々『真面目』と突っ込まれるほどで、同級生の女性に対しても『さん』付けをして、敬語で話します。
女性に対する免疫は、一般の男子高校性以下であり、距離感が近い海夢にしどろもどろになることが多いです。
ただし一度でも集中すると人形店の若旦那らしく、真剣な表情となって羞恥心や余分な感情を見せずに、黙々と作業に打ち込み始めます。
その真面目かつ集中力の高さは、コスプレ衣装の依頼を受けた際にキャラクターの理解度を深めようと、原作の大人向け美少女ゲームをイヤホンもせずに音量を流しっぱなしでプレイする、という行動に走らせています(真顔でメモも取っている。しかも祖父に見られたが、本人は気づかない)
ファッションには無頓着で、私服は作業衣とインナー用の白シャツです。
喜多川海夢
3月5日生まれで身長は164cm。新菜と同じクラスに所属しているギャルです。
母親を病気で亡くしており、父親は高校入学前に転勤が決まったために、マンションで1人暮らしをしています。父親との仲は良好で、夏休みに宿題をサボった罰で遊び禁止令を出された際は、泣く泣くですが素直に従っていました。
言いたいことをスパッと口にできる気持ちの良い性格をしており、ナンパをしてきた男性にも堂々と啖呵を切れる度胸もあります。
読者モデルとして活動しており、事務所から専属モデルにならないかと言われるほどの美少女です。モデル経験からか演技力も高いです。
他人の辛い気持ちを共感して、涙を流せる人情派な一面もあります。
思いついたら即実行と言わんばかりの行動力に満ちており、その上で大雑把な性格もしているので、度々新菜を引かせています(いきなり新菜の家に突撃してきたり、数十万はする高額な一眼レフカメラの型番が自分と同じ頭文字だったから購入するなど)。
オタク趣味は公言しており、子供向けアニメから大人向けの美少女ゲームまで幅広く楽しんでいます。そのため自室は痛部屋と化しており、見た目がアレなグッズも隠さずに置いています。そのため新菜が招かれた時は、彼の初めて女子の部屋に上がり込んだという緊張を秒で消し飛ばしました。
まとめ
ちょっと控え目で頼りないと思いきや、職人として見せる顔がカッコいい主人公と、多くを肯定してくれる優しいヒロインかと思ったら、趣味の熱中具合がガチのオタクギャルという組み合わせが面白い作品です。
コスプレ衣装制作の過程も、とても興味深いので、興味がある方は作品に触れてみてください。
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