
原作:荒川弘(スクウェア・エニックス「月刊少年ガンガン」2001〜2010年)
巻数:全27巻・完結
アニメ:2003年版(全51話)/FULLMETAL ALCHEMIST(全64話)+劇場版2本+OVA
制作:ボンズ(両シリーズ共通)
『鋼の錬金術師』には、テレビアニメが2つあります。2003年版と、2009年の『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』です。続編ではなく、同じ物語をもう一度アニメ化したものです。
だからこそ「どっちを観ればいいのか」で止まります。この記事は、そこだけを決めるために書きました。結論を先に書くと、初めてなら2009年版のFULLMETAL ALCHEMIST(以下、FA版)からです。ただし2003年版は「原作と違うから劣る」という話ではありません。理由まで含めて説明します。
結論:初めてならFULLMETAL ALCHEMISTから
2つの違いは、ひとことで言うと原作との距離です。
| 2003年版 『鋼の錬金術師』 | 2009年版 『FULLMETAL ALCHEMIST』 | |
|---|---|---|
| 放送 | 2003年 | 2009〜2010年 |
| 話数 | 全51話 | 全64話 |
| 原作との関係 | 序盤は原作に沿い、 中盤以降は別の物語 | 原作の最終回まで |
| 続き | 劇場版『シャンバラを征く者』 | テレビシリーズで完結 |
| 監督 | 水島精二 | 入江泰浩 |
| 制作 | ボンズ(共通) | |
原作の物語を最後まで観たいなら、FULLMETAL ALCHEMISTを選んでください。全64話で原作の結末まで描き切っているので、これ1本で完結します。劇場版もOVAも、観てからで大丈夫です。
2003年版を先に観てしまうと、後半で「原作と違う」ことに戸惑いますし、そのあとFULLMETAL ALCHEMISTを観ると序盤が重複します。迷ったらFULLMETAL ALCHEMIST。これが答えです。
2003年版は「失敗作」ではありません
ではなぜ、原作と違う物語のアニメが存在するのか。理由は制作時期にあります。
2003年版が作られたとき、原作はまだ連載の途中でした。原作が2010年に完結したことを考えると、7年も前です。毎週放送すればアニメが原作に追いついてしまう。だから別の道を選んだ、という順番です。
ここで重要なのは、それが原作者の意向だったという点です。荒川弘さん自身が、アニメには漫画と違う独自の結末を、と注文したことを公開当時に明かしています。2003年版の水島精二監督も、結末までのおおまかなプランを荒川さんに提示していたこと、荒川さんがアニメは原作漫画とは別のものでよいと考えてくれていたことを語っています。
つまり2003年版は、原作者公認の「もうひとつの鋼の錬金術師」です。原作をなぞらなかったのは事故ではなく、最初からそう設計されていました。
この前提があると、選び方はこうなります。原作の物語を知りたいならFULLMETAL ALCHEMIST。そのうえで「同じ設定で描かれた別の結末」も観たくなったら2003年版。2本が並んでいるのは、そういう関係だからです。
どのサービスで観られるか
ここに落とし穴があります。2つのシリーズは、揃っているサービスが違います。
| 作品 | プライムビデオ | Hulu | U-NEXT | ABEMA |
|---|---|---|---|---|
| 2003年版(全51話) | ○ | ○ | – | ○ プレミアム |
| FULLMETAL ALCHEMIST(全64話) | ○ | ○ | ○ | ○ プレミアム |
U-NEXTには2003年版がありません。FULLMETAL ALCHEMISTだけを観るなら問題ありませんが、2つとも観るつもりなら、プライムビデオかHuluを選んでおくほうが確実です。
ABEMAは2003年版の第1話だけが無料で、第2話から先はABEMAプレミアムでの視聴になります。まず1話だけ試したい、という使い方には向いています。
初めての方はFULLMETAL ALCHEMISTから。2003年版はU-NEXTに無いので、両方観るならプライムビデオかHuluになります。Huluは定額の見放題サービスで、対象作品は1話ごとの追加課金なしで視聴できます。※最新の配信状況・料金は各公式サイトでご確認ください。
プライム会員でない方は、初回30日間の無料体験から始められます。
検索するとき、実写映画と間違えないために
配信サービスで「鋼の錬金術師」と検索すると、テレビアニメのほかに2017年公開の実写映画も出てきます。タイトルが同じなので、そのまま再生すると別物です。
見分け方は簡単です。「FULLMETAL ALCHEMIST」と付いているのが2009年版。付いていないテレビアニメが2003年版。2003年版はタイトルにFULLMETAL ALCHEMISTを使っていません。実写映画は「邦画」「2017年」の表示で見分けられます。
劇場版とOVAは、どっちの続き?
劇場版が2本ありますが、それぞれ別のシリーズにぶら下がっています。ここを取り違えると話がつながりません。
| 作品 | 公開 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 劇場版 シャンバラを征く者 | 2005年 | 2003年版の完結編。最終話の後日談 |
| 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星 | 2011年 | FULLMETAL ALCHEMIST側の映画オリジナル |
| OVA | ─ | 本編を補う短編集 |
シャンバラを征く者は、2003年版の第51話を観てからです。順番を逆にすると意味が分かりません。逆に、FULLMETAL ALCHEMISTしか観ていない人がこれを観ても、話がつながらないので注意してください。
嘆きの丘とOVAは、本編を観終わってからで大丈夫です。どちらも本編の理解に必須ではありません。
劇場版2本とOVAは、プライムビデオとU-NEXTのどちらでも観られます。シャンバラを征く者だけは、2003年版の第51話を観たあとにしてください。※最新の配信状況・料金は各公式サイトでご確認ください。
声で選ぶ、という手もあります
2つのシリーズは、エドとアル以外のキャストがほぼ入れ替わっています。同じ役でも声が違うので、どちらを先に観たかで印象が変わります。
| 役 | 2003年版 | FULLMETAL ALCHEMIST |
|---|---|---|
| エドワード・エルリック | 朴璐美(続投) | |
| アルフォンス・エルリック | 釘宮理恵(続投) | |
| ロイ・マスタング | 大川透 | 三木眞一郎 |
| ウィンリィ・ロックベル | 豊口めぐみ | 高本めぐみ |
| リザ・ホークアイ | 根谷美智子 | 折笠富美子 |
| スカー | 置鮎龍太郎 | 三宅健太 |
監督・シリーズ構成・キャラクターデザイン・音楽も、すべて別の人が担当しています。主要スタッフで共通しているのは、アニメーション制作のボンズです。同じ原作を、別のチームがもう一度作ったと考えると分かりやすいと思います。
『鋼の錬金術師』はどんな話か
ここまで選び方の話をしてきましたが、これから初めて触れる方のために、作品そのものにも触れておきます。
舞台は錬金術が科学として発達した世界です。錬金術には「等価交換」という原則があり、何かを得るには同じだけの何かを差し出さなければなりません。主人公の兄弟は、その原則に反する禁忌に手を出し、体の一部を失いました。失ったものを取り戻すための旅が、物語の出発点です。
主要キャラクター
エドワード・エルリック(CV:朴璐美)/史上最年少で国家錬金術師の称号を得た天才。「鋼の錬金術師」という二つ名は、右腕と左足が鋼の義肢「機械鎧(オートメイル)」であることに由来します。
アルフォンス・エルリック(CV:釘宮理恵)/屈強な鎧すがたの見た目とはうらはらに、とても優しい心を持った少年。失った身体を取り戻すため、兄とともに旅に出ます。
ウィンリィ・ロックベル(CV:豊口めぐみ/高本めぐみ)/兄弟の幼馴染みで、リゼンブールに住む義肢装具師。エドワードの機械鎧は彼女が取り付け、メンテナンスも担当しています。
ロイ・マスタング(CV:大川透/三木眞一郎)/「焔の錬金術師」の二つ名を持つ国家錬金術師で、国軍大佐。発火布の手袋で火花を起こし、錬金術で焔を操ります。
ウィンリィとロイの声優が2人ずつ並んでいるのは、前の章のとおり2003年版とFULLMETAL ALCHEMISTでキャストが違うからです。左が2003年版、右がFULLMETAL ALCHEMISTです。
原作を読むなら
原作は全27巻で完結しています。全世界シリーズ累計は8000万部を突破しました(2022年8月時点)。
作者の荒川弘さんは、連載開始当時をこう振り返っています。
「第1巻の部数を聞いたときに『これは絶対売れ残る』と思ったんですよ。担当編集さんと『売れ残ったら、一緒に北から行商して回ろうぜ』って話をして(笑)」
──『Febri』Vol.41 荒川弘インタビューより
8000万部の作品の第1巻が、そういう空気で世に出ていました。同じインタビューでは、20巻くらいで終わると思っていたが27巻までいった、描くべきものはすべて描いた、とも語っています。27巻という長さは、作者が描くべきものを収めきった結果の分量だということになります。
アニメを観てから読むと、FULLMETAL ALCHEMISTがどれだけ原作に沿っているかが分かります。2003年版を観た人なら、途中から道が分かれていく感覚を確かめられます。
まず1巻を試してから決めるのが確実です。結末まで知っている方は、27巻をまとめて手元に置いたほうが読み返しが止まりません。
よくある疑問
Q. 2つとも観るなら、どっちが先ですか?
FULLMETAL ALCHEMISTが先です。原作の物語を知ってから2003年版を観ると、「同じ設定でここまで変わるのか」という見え方になります。逆順だと、2003年版の後半で戸惑ったまま、序盤をもう一度観ることになります。
Q. 全部観るのにどれくらいかかりますか?
FULLMETAL ALCHEMISTの64話だけなら、1話24分前後でおよそ26時間です。2003年版51話を足すとさらに20時間ほど。劇場版は1本2時間前後です。まずは64話を目標にするのが現実的です。
Q. 2003年版だけ観る、というのはアリですか?
アリです。作者公認の独立した物語なので、そこで完結します。ただしテレビシリーズだけだと収まりが悪いので、その場合は劇場版『シャンバラを征く者』まで観てください。
Q. 原作を読んでいれば、アニメは観なくていいですか?
FULLMETAL ALCHEMISTは原作に沿っているので、物語としては既知になります。それでも2003年版は原作と違う結末を持っているので、原作読者ほど楽しめる部分があります。読んだ人にとっては、むしろ2003年版のほうが「新作」です。
こんな人におすすめ
完結した長編を、腰を据えて一気に観たい方に向いています。テレビシリーズは64話で終わりますし、原作も27巻で完結しています。続きを待つ時間がありません。
同じ物語の「別の結末」に興味がある方にも勧められます。作者公認でここまで違う2本が並んでいる作品は、そう多くありません。
逆に、1話ごとに気楽に観たい方にはやや重い作品です。話が連続しているので、まとまった時間が取れるときに始めるのがおすすめです。
まとめ
初めてなら『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』の全64話から。原作の最終回まで描き切っているので、これ1本で完結します。
2003年版は、原作者自身が「漫画とは違う結末を」と望んで生まれた、もうひとつの鋼の錬金術師です。原作の物語を知ったあとに観ると、いちばん面白く感じられます。続けて劇場版『シャンバラを征く者』まで行くと、そちらの物語も閉じます。
配信で迷ったら、2つとも観るつもりならプライムビデオかHuluを選んでください。U-NEXTには2003年版がありません。検索で実写映画に当たってしまったときは、「FULLMETAL ALCHEMIST」の有無で見分けられます。
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アニメの前でも後でも読めます。2つのアニメがどこで重なり、どこから分かれるのかは、原作を読むといちばんはっきりします。
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