『イナリワン(ウマ娘)』ストーリーネタバレ『後』

『イナリワン(ウマ娘)』ストーリーネタバレ『前』の続き

育成ストーリー

『江戸にイナリあり』と喧伝するために、厳しいトレーニングだったとしても、いつも前向きに明るく笑って立ち向かっていく強さを始めから持っていました。

その根底にあるのは、生まれ育った地元である大井のことを深く愛する心です。町の皆から後押しされて中央にやってきた経緯から、トゥインクル・シリーズという大舞台で大喧嘩して『どでかい花火』を打ち上げようと突き進む覚悟は生半可なモノではなく、どれだけ困難な壁にぶつかってもぶち壊してやるという気迫に満ちています。

そのため『地方』から『中央』に『上がってきた』。地方のことを格下のように言われることが気に食わず、納得できません。他人からそう言われると、『あたしの育った場所は決して劣っていない』と怒りを見せます。

地元愛は強いですが、冷静に物事を見れる理性も備えており、怒りから叫びたくなっても爆発させる場所は選んでいます(クラスメイトに地方が格下と取れる発言をされた時は、その場から離席してトレーナー室まで我慢していました)。

また『中央のレースはでかい、規模も、観客の数も、地方のそれよりは大きいのは事実』と認めており、クラスメイトの発言に関しても『結局はその規模の違いのこと、悪気がないのはわかっている』と振り返っています。

それでも『地方を走っている皆の力が、想いが、心意気が、中央より劣っているとは言わせたくない』のが本心ですが、デビューしたばかりのイナリワンがなにを言っても誰も聞かないのはわかっている、と現実を受け止めています。

そういった経緯から、実績を積み上げて、誰もイナリワンの言葉が無視できないぐらい大きな存在になる。『テッペン(一番、頂点、最強)を獲り、誰もが見上げる、振り返る、でかくてうるせぇ花火に成る』という新たな目標を立てました。

地方のテッペン

イナリワンは『生まれ育った「地方」と技を磨いた「中央」のレースで勝ち、地方は中央に負けていない』ことを証明するために、地方と中央の両方で走りました。その第一歩として『大井のジャパンダートダービー』に出場することを決めましたが、『主戦場は中央ではないのか?』という疑問の声が記者から上がります。

それに対してイナリワンはべらべら語るのは粋ではないとして、多くは語らず『ただ走る姿を見てほしい』とコメントしました。

イナリワンは大井の皆を尊敬して、その強さも知っています。だからこそ軽々しく地方のテッペンに立つとは言わない、走りと結果で実績を示す、そうじゃないと失礼と考えていました。

しかし親方からは『ビビって偉そうな理屈をつけず、テッペンを獲る喧嘩をしたいなら胸を張って堂々と宣伝しろ』と言われます。

勝手にそうすべきと決め込み、トレーナーや大井の皆と向き合わず逃げて意地を張っている。自分1人で勝手しているだけだと叱咤されたイナリワンは、『祭りは1人じゃできない』という言葉を思い出し、逃げず隠れず宣言しました。

『全身全霊をもって、大井の地に一花咲かせ、地方のテッペン、獲らせていただきます!』

それは江戸っ子らしい堂々とした喧嘩のふっかけ方でした。

その後、地方のレースに勝利して『地方のテッペン』を獲ったイナリワンでしたが、世間は『中央で走るオグリキャップ、スーパークリーク、タマモクロス』の話題で賑わっていました。

中央のテッペン

地方で『テッペン』を奪い合う熱い激闘があったことを見向きもされない現状に、下町の皆は意気消沈します。しかし、イナリワンは『年度代表ウマ娘』を目指すと声高に宣言して活気を取り戻します。

大井の皆の想いと期待、皆への熱い想い、そこから成る強烈な使命感を原動力にイナリワンは走りました。

それから中央でいくつかのレースを走りましたが、世間ではオグリキャップとスーパークリークの注目度が高く、地方のレースが中央に負けていないことを宣言するには、やはり『テッペンである年度代表ウマ娘』しかないとイナリワンは考えます。

テッペンをもぎ獲る気迫と緊張感に、身に纏う空気は徐々に張り詰めていきました。レース後も気を抜かず、実績が足りないと焦る姿に、以前のお祭り騒ぎのように明るく振る舞う姿はありません。

地方に対する評価も変わらず、今の走りだと大井の皆の凄さは証明できないと焦り、どんどん強くなっていくオグリキャップとスーパークリークの実力に威圧感を覚えてしまいます。

『次はオグリキャップが、スーパークリークが勝つ。今日はイナリワンの巡りがよかっただけ。そんなふうに、ムラのあるウマ娘だと思われている限り、あたし自身がそう思っちまう限り、テッペンには届かない

このままでは地元の皆に顔向けできない、とイナリワンは頑張りましたが、とうとう限界が来て倒れてしまいます

倒れたイナリワンのために、トレーナーと大井の皆が協力して祭りを開きましたが、その表情は浮かないモノでした。

『テッペンを獲ると啖呵を切ったが、皆から託された想いを無下にして、背負うことすらできない。あたしは無粋だ、みんなによくしてもらう資格がない』

しかし、地元のために押しつぶされるほど頑張ったイナリワンを悪く言い、離れようとする無粋な輩は、彼女が愛する大井にはいません

『中央のでけぇ喧嘩を走っている時、こんなにかっけぇウマ娘が自分たちの代表なんだ、と爽快だった』

『大舞台で立派に走っている姿を見れるだけで最高の気分』

『時代の最強と競ってる姿を見て、涙を堪えるのが大変だった』

『あんなにちっちゃかったイナリがレース場で、たくさんの人に名前を呼ばれているのを見て、嬉しかった』

そして皆のために走り、抱えきれないぐらいたくさんのものをくれたイナリワンこそ粋であり、みんなの『イナリ様』でした

『だから、もうそんなに気負わなくていい、おめぇはおめぇの喧嘩をすればいい

皆の想いと期待には応えてくれた、と感謝する親方の言葉に、イナリワンは抱えていたモノを全て吐き出すように泣きました。泣いて、すっきりして、いつまでも辛気臭い面はできないとお祭り騒ぎを始めます

祭りの心意気、粋の真髄

トレーナーや大井の皆と騒ぎながら、イナリワンは思い出します

それは子供の頃に見た祭り。その大一番、緊張が最高潮に達した時、いつだって町の大人たちはビシッてキメて祭りを盛り上げていました

どうしてそんなに、粋にキメられるのか尋ねたイナリワンに、大人は答えます。

『失敗できねぇ負けられねぇ、やらなきゃならねぇ、そんな緊張しちまう瞬間こそが、祭りの大一番なのさ。それさえわかれば、キメ所がすぐわかる。そしたら後は『自分が楽しむだけ』ってな。気持ちいいぜ、キメ所で決めた時、皆の想いが、自分という花火でぶちあがる瞬間はな。それこそが祭りの心意気、粋の真髄よ

その言葉に理由はわかりませんが、凄い粋だと当時のイナリワンは感じました。

けれど今なら言葉の意味がわかります、そして今のイナリワンに足りなかったものがなにか。

イナリワンは『みんなのために』と思うあまり、勝つことや、結果のことばかり考え、肝心の『この喧嘩を始めたのが自分』だということを忘れていました。

皆の想いを叶えるために走りますが、その前に『地方は中央に負けてねぇ』という自分だけの火種があったのです。

祭りは1人ではできない。けれど、祭りをしたいと願う人がいなければそもそも始まりません。

この喧嘩はイナリワンが始めた喧嘩であり、テッペンを獲るために走るのはイナリワン自身です

足りないものを思い出し、自分の中に熱い炎が戻ったイナリワンは宣言します。

『皆の想いを胸に抱えて、あたしはあたしの喧嘩のケリをつける。そしてあたしは全てのものが見上げる花火、トゥインクル・シリーズのテッペンに立ってやらぁ

トゥインクル・シリーズ最大の祭り『有馬記念』で、今度こそしっかりキメるために、イナリワンはトレーナーと共に走り出しました。

ウマ娘としてのイナリワン

デビュー前にして、大地を揺るがすかのような力強い走り、火花がごとく燃え盛る闘争心、砂地でさえ光って見えるスピードを持っていました。

地方の選抜レースでは4バ身差の圧勝を見せており、小さな体躯に溢れるパワーを宿しています。

それでいて冷静に物事を捉えることができ、熱くなりすぎて周りが見えなくなることはありません。

地道に鍛え続けるのも江戸っ子の心意気と語り、影で努力することをまったく苦にしておらず、トレーニングやレースの反省会にも真面目に取り組んでいます。

活力とモチベーションに満ちている反面、使命感が強く託された想いに何とか応えようともがき続けてしまい、上述の倒れる原因にもなりました。

トレセン学園を見学した時に、オグリキャップとスーパークリークの併走を目撃したことが中央に転入する一押しとなったため、不思議な縁を感じています。また『2人と走るレースは必ずデカい祭りになる』という定めを感じていました。

それは的中しており、天下分け目の大いくさ、トゥインクル・シリーズの大祭り『有馬記念』にて3者は激突します。

レース時も常に明るく堂々とした振る舞いを見せるイナリワンですが、緊張や恐怖は感じます。しかし、それらを感じるからこそ魂が燃えずにはいられない。今この瞬間が地元の皆の想いを背負ったイナリワンの喧嘩であり、『イナリワンの祭り』であることの証明でした。

『見せてやるぜ、祭りの心意気、粋の真髄をな』

永世三強が並ぶレースを炎のような気迫で走り、イナリワンは歴史に残る花火を打ち上げます

オグリキャップとスーパークリークは強敵であり、だからこそ同じ世代であることをイナリワンは喜びました。なぜなら祭りは1人ではできないからです。

イナリワンは育った下町、大井のレースがなければここにはいませんでした。そして、今日共に走った全てのウマ娘がいなければ、中央のトレセン学園がなければ、このレースは生まれなかった

テッペンを獲ったイナリワンは宣言します。

『今日の有馬記念は、地方と中央のでけぇ熱が打ち上げた史上最大の花火。そして、その花火の中心で輝いたのは、大井が生んだ粋なウマ娘、あたし、イナリワンであることを、どうか覚えていってくだせえ』

地方も、中央も、全てのウマ娘が、レースが、等しく全部最高であることをイナリワンは叫びました。

『有馬記念』が終わっても祭りは終わりません、江戸っ子は湿っぽい空気が苦手であり、またハレ(非日常)とケ(日常)は繰り返されるからです。次の祭りに心躍らせ、暗い気持ちを消し飛ばしていきます。

イナリワンの打ち上げた花火は、その熱は、輝きは、人々の心に残り続けていきます

その走りが語られるたび、人々はその心の内に、あの猛々しき囃子の音を聞くでしょう。

確たる最強などなく、最強を競う者が、ただひたすらせめぎ合い、輝き合う、一度として退屈の無い、黄金時代。退屈、停滞、膠着、なにもかも吹き飛ばすデカい花火を打ち上げたイナリワンは、その時代を作り上げる最大の存在であると証明しました。

まとめ

義理堅いイナリワンと、その気持ちをちゃんと汲みながらも厳しく後押ししてくる親方、そして大井の皆との絆がとても良かったです。

第3章からシンデレラグレイに本格登場するイナリワン、漫画版とアプリ版で二度活躍を楽しみましょう。

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