『ドリームジャーニー(ウマ娘)』ストーリーネタバレ・終
の続き。
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育成ストーリー
ステイゴールド
そのウマ娘の軌跡は、長い長い、旅に似ていました。思い出す彼女の全てが、まるで黄金のように輝いています。
決して華やかな、勝利に満ち溢れたウマ娘ではなかった。むしろ勝ちきれないレースばかりで、同じ時を走った才能あるウマ娘たちと比べて、戦績だけ見ればずっと地味です。
競い合ったウマ娘たちは、同世代も、先輩も、後輩も、実に才能豊かで華やかでした¹。それでも彼女はひたすらに、背中を追い続けた。諦めずに、勝利を求めてレースという旅を続けます。どこまでも、どこまでも。その果てに、彼女は自分だけの黄金の勝利に、辿りつきました。
¹……同世代は『サイレンススズカやマチカネフクキタル』、先輩(1つ上の世代)は『エアグルーヴ』、後輩は『黄金世代や覇王世代』(さらに下だと、アグネスデジタルやジャングルポケットの世代とも競っている)。
『旅の果てに、一筋の黄金を見た。長く、永い……はるか向こうにまで続く、光。それを追いかけて、また、次の旅に行こう』
それが、ステイゴールドの残した言葉。彼女と、彼女のレースを愛した全ての者に、深く刻まれた置き土産です。
その不屈の姿に、多くのものをもらいました。いつしか彼女の惜敗を、心から悔しがるようになり。がんばれと。今日こそはと。応援せずにはいられない。愛さずにいられない。
きっと『あの頃のレースが1番楽しかった』と。『あの時代にこそ、ウマ娘のレースの面白さ、その全てがあった』と。そう語る者も少なくないです。
トレーナーとドリームジャーニーも大きく影響されており、それは巡り巡って、2人を結びつけました。
ドリームジャーニーはステイゴールドを『アネゴ』と呼び、憧れています。その長い旅路を、最後まで楽しそうに駆け抜けたアネゴに。彼女が旅の果てに見たとう、一筋の黄金に。
『アネゴと同じように旅をし、アネゴの見た黄金を確かめること』
それがドリームジャーニーの夢です。
ステイゴールドと面識があるだけでなく、フォロワーを自称しており、ステイゴールドの走りに影響されています。
レースファンや記者が一目見てピンと気づくほどで、『ドリームジャーニーを通してステイゴールドを懐かしむ』記事が書かれたが、重ねられて悪い気はしないと流しました(ただトレーナーが『もっとドリームジャーニーを見て欲しい』と気を悪くしたため、後日『彼女のフォロワーとして、トウインクルシリーズを駆け抜けたい。そのうえで、ドリームジャーニーとして、更なる高みを目指していくつもりです』と笑顔で圧力をかけた。記者の顔は強張った)。
憧れてはいるが、まるで理解できない部分もあります。
今も語り継がれる至高の一戦、世紀のレース。人々が皆、勝者の偉業を讃え、誰しもが輝きの余韻に浸る中。ステイゴールドは大敗しました。
きっと、己の非力さを痛感させられたはず。なのに、ステイゴールドは、笑います。
出走ウマ娘の誰よりも高らかに。出走したウマ娘よりも楽しげに。子供のような黄金を瞳に宿して。負けたのにどうしてそんなに、楽しそうに、嬉しそうに笑えるのか。
恐らくステイゴールドの内には、善戦も惜敗も、主役も脇役もない。ステイゴールドというウマ娘の在り方、本質は、それらを超越した部分にあります。
『まるで理解できなかったからこそ、私は―――畏れ、憧れた』
ウマ娘としてのドリームジャーニー
後方に位置取り、ひたすらに相手の背中を見据えて、爆発的な瞬発力で飛ぶように抜き去ります。
その加速力を生むのが、脚を多く回して走るピッチ走法です。小柄な体躯ゆえだが、スタミナを多く消費します。それでも走りに安定感があるのは、元々持っている素質が高いからです。
自分の体ことは、『愛する両親がくれた私の誇り。強く、速く、美しくあらねばならない』と思っており、気にしていません。
ただ小柄なため、大きい体躯のウマ娘と比べると、そのパワーにはどうしても差が生じます。路線の垣根が消え、クラシック級でフィジカルの完成度が高いウマ娘が揃いだすと、ドリームジャーニーにとって不利が起こりやすいです。
レースにおいて、その差は多くの戦術的な制限を生み出します。天候も含めて、タフなレースになればなるほど、厳しい戦いを強いられます。そのためドリームジャーニーのトレーナーは、シビアに状況を確認して、柔軟に対応しなければなりません。
それを補う手段の1つとして、『悟られないように走るペースを緩やかに上げる』など、駆け引きが得意です。体格差がある相手でも物怖じしないハートの強さは、デビュー戦で一切の緊張を見せず、かけるべき言葉が思いつかないほど。
初めてのG1レースでもただただ落ち着いており、SNSを眺めながら『思いの外、注目されているようですね』とサラッと言っています。レース後も淡々と今後の方針を確認しており、冷めているように感じるが、顔に出ていないだけです。
出走ウマ娘から威圧感を感じることもあれば、楽しむ気持ちも持っています。
また優等生と評されるだけあり、『今までのトレーニングデータや、分布図で値の近いウマ娘のデータを分析して、3年間の目標を設定した』計画書は、細部に渡って緻密に組まれていました。それはトレーナーが口出しできないほど完璧で、『半端な仕事では彼女のプラスにならない』と気を引き締めたほど。
嵐
トゥインクルシリーズでは王道路線、クラシック三冠を大目標に置き、シニア級も中長距離主軸で走ります。つまりステイゴールドに辿りつくための旅です。
ドリームジャーニーがなぞろうとしているステイゴールドの旅とは、『嵐との対峙』です。
嵐とは、旅人の歩みを阻む巨大な力。あるいは、旅路そのものを変えてしまう存在。その象徴。
ステイゴールドはその旅において、何度も強大なウマ娘たちと対峙してきました。その対峙の中には、後に歴史的なレースと謳われるものも、多く存在しています。
人々の心を動かし、レース界を変えてしまった数々の嵐。ステイゴールドは旅路の中で、最も多くの嵐を向き合ってウマ娘とも言えるでしょう。
『私の旅も、かくありたい』
いくつもの嵐と向き合い、歴史の輝きを見い出すような、そんな旅に。そして、そのような旅の果てにこそ。一筋の黄金があります。
そこに至る道のりは、極めて険しく、日本ダービーでぶつかった『嵐』は常識の埒外にいる存在でした。嵐たるウマ娘は、敗れてなお存在感が増し、その底知れなさに震えが止まりません。
『ああ、素晴らしい。いつ以来だ。こんな、冷や汗をかくだなんて。私は運がいい、あらゆる意味で』
嵐たちは、歴史的なレースを経て、さらに力を増していく。このままでは、ドリームジャーニーの旅路は、早くに途切れてしまう。そして埋没する。時代の最先端を追えず、その旅路は、閉ざされる。
ドリームジャーニーの確信は、きっと正しい。彼女の洞察はいつだって間違いません。
その背を押したのは、ドリームジャーニーと旅の果てを共に見るのだと、すでに誓っていたトレーナーです。そして道を示したのは、ステイゴールドからのメッセージでした。
盟約
メッセージは要約すると『メジロ家を頼ってみろ』。メッセージを届けて、メジロ家に招待したのは、超一流ステイヤー『メジロマックイーン』でした。
彼女もステイゴールドと縁があり、輝く黄金の如き信念に惹かれたウマ娘の1人で、同士です。レースを走るウマ娘として、できる限り長く旅を続けることに、個人的に感じ入るものがあった模様。
メジロマックイーンから、ステイゴールドも『嵐』と向き合い、憂いていた話を聞きます。
今後の成長と、将来現れるライバルの力を予見して、このままでは旅が続けられない。そう判断したステイゴールドは、メジロ家で研鑽を積み増した。その最たるものは、レースにおける頑強さです。
メジロ家は、長距離G1での勝利に対し、強い想いを抱いています。長くタフなレースを戦うための戦術、肉体、メンタル。それらを構築するためのノウハウを積み上げてきた自負があります。
ステイゴールドとメジロ家は相性が良かった。やり方と、在り方が。
ドリームジャーニーもメジロ家の秘術を、意思を、与えられる限りを継承します。それをもって、今後のドリームジャーニーの走りで、証明してほしいと頼まれました。
メジロ家の強さ。誇り。存在。その全てを。
メジロ家の伝統ある戦術²では、レースの高速化という時代のトレンドに適応できなかった。また世間では、長距離G1の価値が、いくばくか下がっている傾向です。強さの基準として見た際に、宿る意味合いが昔とは変わっていました。
²……長距離レースに重きを置き、スタミナの多さを主軸に据えた走り。
それらが理由で低迷したメジロ家の強さを再認識させる。メジロ家とドリームジャーニーの間に結ばれた盟約です。この出会いをもたらした、黄金の縁に誓って、ドリームジャーニーは継承します。彼ら彼女らの誇りを、自分たちの旅に。
繋がり
大恩に報いるべく挑んだ菊花賞は、メジロマックイーンが初勝利し、ステイゴールドが初めて走ったG1レースです。半端な走りは、許されません。
研鑽の成果として示したのは、小さくても強いウマ娘が強い。嵐の側に立ち、新たな歴史を作りました。その栄光を讃える声が響きます。多くの縁があってこその結果です。
レースでの活躍に応じてファンも増えており、『黄金旅程第二章』『さぁ夢の旅路へ』など、横断幕が張られます。
ドリームジャーニーはクラシック三冠など、多くのG1レースで結果を出しました。今の時代において最前線を駆けるウマ娘であると、多くのレースファンが太鼓判を押します。その活躍に比例して、応援するファンが増えるのは、極めて自然な流れです。
しかし、ドリームジャーニーから飛び出した言葉に、トレーナーはくらくらした感覚を覚えます。
『私のファンは、それなりの数いるのでしょうか?』
無意識に自分のことを「ファンがつかない」と思っていました。ウオッカやダイワスカーレットには、オーラやスター性がある。妹のオルフェーヴルに至っては、すでに超然として輝きを身に纏っています。そのような華やかな存在に比べると、実に地味なウマ娘で、見栄えしないと思っていました。
そんなことはなかったわけで、素直に認めます。ファンが多くいると。そして、今までファンを顧みることが、真にできていなかったと。
トレーナーから『ファンが増えて嬉しいか?』と問われて、考えます。
ステイゴールドは、旅が続くにつれ、より多く愛されるようになった。それに呼応するように、レース後の笑顔も、より楽しげになっていった。
今までは、嵐が動くレース界全体を、旅の景色として見ていました。そこから考えを改めて、ファンとドリームジャーニー自身も、その景色の一部であると認識します。
ドリームジャーニーにとっては、ファンはどんな存在か。
ファンにとってドリームジャーニーは、どんな存在か。
『そこから一筋の黄金について、何かを掴めるかもしれない』
ここまでは、嵐を見い出すのが楽しみでした。そこに別の楽しみが生まれます。夢を託した方々に応え、必ず勝利する。嵐を追う者が、嵐そのものに、愛されるウマ娘になるような。
もしも、そうなれたなら。その瞬間、トレーナーには見えました。万雷の拍手、歓声。その中心にいる、夢の旅人の姿が。それは……旅物語ではなく、童話でもなく、夢のある物語です。
『共に叶えるとしましょう。夢のような旅路を』
これまでで1番力強い宣言に、胸が高鳴ります。
新たな夢への旅路
『まさかこんなにも……ファンのことを気にするようになるだなんて』
旅はそういうものです。色々なところに行き、色々な物を見て、色々な人に出会い、色々な経験をし、進んでいく。そのひとつひとつに変化が、その兆しがある。今のドリームジャーニーの姿は、彼女の旅路による積み重ねです。
多くのファンの声が、熱を伴って、渦を成して、会場を包んでいく。正に、嵐の如く。それを受けて湧き上がるのは、ぬくもりと衝動。会場の熱狂に、呼応するように。嵐を宿したかのように。
ファンを想って、夢を背負って走ったことで、ドリームジャーニーの勝利の景色は大きく変わりました。まさに夢のような景色です。その背中に預けられた夢が、とても眩しく、愛おしく感じます。
気づけばドリームジャーニーは、その走りに多くのものを宿しています。最初は縁を力に変えて、旅を進めてきました。今では、ファンの想いも宿し、その夢を果たそうとしています。あの時からは考えられないほどの、変化であり、旅でした。
トゥインクルシリーズも3年目、旅は大きな区切りを迎えるが、終わりではありません。ファンも、ドリームジャーニーも、トレーナーも、まだまだ夢を見る。夢を見たい。この旅はきっと、そういう旅になりました。
ドリームジャーニー自身から湧きだし、ファンからもたらされる、その衝動に従い旅人は宣言します。
『来年のグランプリ、有馬記念。私はそこを目指すことを今ここに宣言します。そして、必ず勝利し、成し遂げることを誓いましょう。グランプリ連覇を』
さぁ、夢のような時間の幕開けです。忘れられない程に、刻み付けます。ドリームジャーニーの走りを、奥深くにまで。
―――ジャーニーだ! ジャーニーだ! 夢への旅路だ! ドリームジャーニー先頭だ! ドリームジャーニー1着!―――
レース後、小さくガッツポーズを取るのも、変化です。
グランプリ連覇を果たし、多くのファンの声援を一身に受けるドリームジャーニー。その姿は、何よりも眩しく、黄金よりも輝いて見えます。
『今日、皆様の夢を1つ叶えました。ですが、私の旅路はまだ続きます。ここでまた、新たにお約束いたしましょう。これからも、夢のような旅にお連れすると』
この旅で、いくつもの変化が起きました。その変化とは、決してレース界にのみ限ったものではなく、トレーナーやドリームジャーニー自身の変化も含まれます。
今ならわかります、この変化こそが、旅によって得られるもの。旅人にとっての黄金だと。
『だからこそ、問いたい。貴方は、黄金を見つけましたか?』
旅の同伴者は応えます。その走りで縁を呼び起こし、メジロ家という伝統の力を継承し、再評価させた。これから未来を走りゆく者たちに、己の走りによる積み重ねの強さを示した。それはきっと、未来に新たな嵐を呼ぶ。
過去と未来を繋げる、ドリームジャーニーというウマ娘。トレーナーにとって、このレース界にとって、彼女はまさに一筋の黄金だった。
『私たちはきっと、お互いなくして黄金を見つけられなかった。そしてそれは……これからもきっと、変わらない』
旅の果てに、一筋の黄金を見た。長く、永い。はるか向こうにまで続く、光。
それを追いかけて、また、次の旅に行こう。ドリームジャーニーと共に。
『では、結びましょう。これは、血と魂の……決して破棄できない、誰にも侵せない、契約。貴方自身が、そう望んだのですよ。トレーナーさん』
夢に連れて行こう。人々を。駆けるウマ娘を。レース界を。そして、旅人たちを。
ゆくさき
多くの季節が過ぎ去り、今このトレーナー室に、ドリームジャーニーはいない。
寂しく思う自分もいない。出会いと別れがある。それは旅の必然だ。
彼女が描いた一筋の黄金。それは、今も確かに世界を駆けている。
ひとたびレースに目を向ければ、そこに彼女はいる。その蹄跡が、感じられる。
かつての不変の黄金のように。旅はまだ、続いていく。
その日は久しぶりに、コーヒーを淹れてから、香水を手首につけた。
重厚でスモーキーな香りが、鼻孔をくすぐる。そして、駆け抜けていく。
旅の日々が、儚く、眩く。
遠い異国の地で
探しましたよ、アネゴ。
『お~、ジャーニー! なぁ見ろよ。ここ、いい空してるだろ?』
……貴方は本当に変わらないな。
『で? お前は、何を見つけたんだい』
いくつもの変化。それによる成長、あるいは、誕生。祝福すべき、栄光。一筋の黄金。
けれどそれは、私にとっての、私の旅による、変化。黄金です。
きっと、この黄金は旅の数だけ存在している。
『旅はたくさんある。命の数だけ、たくさんな。……みんな、旅をしている。この世界を、みんな、ずっとずっと。生まれて、死んで。続いて、消えて。長く永い、旅を。なぁ、ジャーニー。お前の旅は、楽しかったんだな』
ええ、夢のように。
『―――そんじゃあ、行くとするかな』
次はどこへ?
『さてね。ま、未来でわかるさ。お前は? ……ハハツ。そうかい。じゃあ、またな』
『そうさなぁ、ジャーニー。色んな旅があるよな、この世界には。いつか来るその果てまでずっと、歩み続けるのも旅だ。そして、帰る場所があるのも……それもまた、旅だよな』
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