『MAO』をおすすめしたい!

概要

『それは、時代ときを喰らう"呪い"』

「週刊少年サンデー」(小学館)で連載中の高橋留美子最新作、『MAO』をおすすめしようと記事にしました。

2019年の連載開始から7年。累計発行部数2億冊を超える高橋留美子が手がけるダークファンタジー×タイムスリップミステリーがついに2026年春、NHK総合でアニメ化。アニメーション制作は高橋留美子原作作品では『犬夜叉』シリーズ以来となるサンライズが担当します。

「高橋留美子って名前は聞いたことあるけど作品は知らない」「MAOって気になってはいるけれど……」という方に向けて、この作品の魅力を伝えます。

原作:高橋留美子「MAO」(小学館「週刊少年サンデー」連載)
監督:佐藤照雄 / シリーズ構成:柿原優子 / アニメ制作:サンライズ
主要キャスト:梶裕貴・川井田夏海・下野紘・豊永利行
OPテーマ:Kis-My-Ft2「HEARTLOUD」
放送:NHK総合(2026年春〜)


MAO(1) (少年サンデーコミックス)

高橋留美子とはどんな漫画家か

「高橋留美子の名前は知らないけれど、作品は何かしら見たことがある」。そういう方が実はかなり多いと思います。

高橋留美子は1978年デビューの漫画家で、単行本全世界累計発行部数が2億冊を突破した、日本を代表するベテラン作家です。代表作を挙げると、ラブコメ×SF『うる星やつら』、メゾンの住人たちの人間ドラマ『めぞん一刻』、格闘武術ラブコメ『らんま1/2』、和風ファンタジーアクション『犬夜叉』、霊的ドタバタコメディ『境界のRINNE』と、ジャンルを横断しながら何十年にもわたってヒットを生み出し続けてきた「少年サンデーの顔」とも言える作家です。

高橋留美子作品の特徴として語られるのは、「ラブコメとファンタジーと不思議な謎を絶妙なバランスで組み合わせる巧さ」です。シリアスな場面でも笑いが滲み出てくる筆致、どこかほろ苦さを帯びたロマンス、日本の妖怪や霊的な世界観を独特の温度感で描く手法——そのすべてが、MAOにも生きています。

ただし、高橋留美子をまったく知らない方にとっての嬉しいポイントは、MAOが過去作品を知らなくても完全に楽しめる独立した作品であることです。犬夜叉を見ていなくても、うる星やつらを読んでいなくても問題ありません。MAOはMAOとして、完結した世界観を持っています。

MAOの世界観:大正×令和×呪い

本作の最大の特徴は、「大正時代」と「令和の現代」が交差するという世界設定にあります。

令和の中学生・菜花なのかが迷い込んだ先は、あやかしが日常に蔓延る大正時代の日本。そこでは陰陽師と呼ばれる術使いたちが、妖や呪いに起因する怪奇事件に対処しながら生きています。

「陰陽師」とは、古来より呪術や占術を用いて天変地異や怪異を退けてきた者たちのことです。MAOでは、陰陽師たちがそれぞれ「火の術」「木の術」などの異なる系統の力を持ち、多彩な怪異に立ち向かいます。

一方で、現代から迷い込んだ菜花の視点が読者の「案内役」を果たすため、この世界を初めて見る人でも自然と物語に引き込まれていきます。

大正を舞台にした作品は近年人気だが、MAOはそこに「令和の少女」を絡めることで、二つの時代の対比が独特の色気と緊張感を生み出しています。

ストーリー:時代を越えた呪いの謎

令和を生きる中学3年生の黄葉菜花きばなのかは、幼い頃に商店街の陥没事故で両親を失い、自分だけが生き残ったという過去を持ちます。ある日、その事故現場だった商店街の門をくぐると、妖の蔓延る大正時代に迷い込んでいました。

そこで出会ったのが、謎の陰陽師・摩緒まお。900年間にわたり「呪い」によって生き続けているという、年齢不詳の青年です。摩緒は菜花を一目見るなり「おまえ、妖だろう」と告げます——自分が妖だとは夢にも思っていなかった菜花は、その言葉で自分の身に何らかの異変が起きていることを悟ります。

やがて明らかになる衝撃の事実:菜花と摩緒には、同じ"呪い"がかけられていた——。

この「呪い」の正体を巡るミステリーが物語の核心を成し、そこに妖との怪奇バトル、登場人物たちの複雑な人間関係、そして大正×令和という時代を跨ぐロマンスの予感が絡み合って進んでいきます。一つひとつのエピソードが独立した怪奇事件として完結しつつ、背後に流れる「900年の呪い」という大きな謎が常に読者を引き寄せ続ける構造は、高橋留美子作品が長年培ってきた「話の引っ張り方」の真骨頂です。




MAOならではの魅力

「意図的に選んだ」ダークファンタジー

本作は、作者・高橋留美子が前作『境界のRINNE』の連載終了後に「次作はダークファンタジーにしたい」と考え、担当編集者と話し合いながら「呪い」をテーマに設計した、いわば意図的な新境地への挑戦です。

これまでの高橋留美子作品には、ラブコメの空気、コミカルな主人公、笑いを誘うハプニングが必ずといっていいほど存在しました。ところがMAOでは、主人公・摩緒にギャグ要素はほとんどありません。900年という時を背負った陰陽師の持つ冷静さ、達観した静けさ——これが今までの「るーみっくわーるど」にはなかった新しい質感です。既刊の読者レビューでも「過去の主人公の中で一番好きかもしれない」という声が多く、この「摩緒の新しさ」が本作の大きな個性になっています。

「バディもの」

高橋留美子は本作の構造について、「物語を動かすのは摩緒であり、ヒロインの菜花はそのバディ的な関係にしている」と語っています。「ヒロインが主人公のバディ」という設計は、犬夜叉とかごめのようなロマンスの予感を残しつつも、互いが自立した存在として物語を推進させる構造です。

一方は900年の記憶と呪いを抱えた陰陽師、もう一方は令和から迷い込み自分の異変に戸惑う中学生——この圧倒的な非対称が、二人の関係に独特の緊張感と引力を生んでいます。「なぜこの二人に同じ呪いが?」という謎が二人を繋ぎ止めながら、物語は進みます。

一話完結+大きな謎

MAOは一つひとつの話が妖や呪いにまつわる怪奇事件として完結しつつ、「摩緒の呪いの真相」「菜花との繋がり」という大きな謎が通底する二層構造になっています。この「一話完結の読みやすさ」と「先が気になる謎」の組み合わせは、高橋留美子が犬夜叉や境界のRINNEでも磨いてきた構成の技です。途中から読んでも楽しめますし、一気読みすれば謎が積み重なって止まらなくなります。

さらに、高橋留美子は「最終的な落としどころは既に決まっている」とも発言しています。

アニメ化について

アニメーション制作を担当するサンライズは、高橋留美子原作のアニメとしては「犬夜叉」シリーズ(2000年〜2010年代)以来の参加となります。犬夜叉はサンライズとの組み合わせがシリーズの映像的個性を作り上げたと言われており、MAOでの再タッグは「あの犬夜叉の空気感を持ったアニメが帰ってくる」という期待感を生み出しています。

大正時代の街並みや妖の描写、怪奇バトルのアクション——これらをサンライズがどう映像化するかは、本作最大の見どころのひとつです。

スタッフ情報

原作高橋留美子「MAO」(小学館「週刊少年サンデー」連載 既刊28巻)
監督佐藤照雄
シリーズ構成柿原優子
キャラクターデザイン・総作画監督菱沼義仁
音楽兼松衆
音響監督菊田浩巳
アニメーション制作サンライズ
OPテーマ「HEARTLOUD」Kis-My-Ft2
主要キャスト梶裕貴(摩緒)・川井田夏海(黄葉菜花)・下野紘(百火)・豊永利行(華紋)
放送NHK総合(2026年春〜)

まとめ

大正時代の街並みに漂う不穏な空気、900年という途方もない時間を抱えた陰陽師・摩緒の孤独、令和の中学生・菜花が迷い込んだことで始まる謎解き——それらが高橋留美子ならではのセンスで織り交ぜられ、シリアスな場面でもふと笑いが滲む独特の読み味を生み出しています。

過去の高橋留美子作品を知らない方は、MAOが入口として最適です。知っている方には、「ああ、これが高橋留美子の"いま"か」と感じさせる作品になっているはずです。

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