テレビアニメ版でプロデューサーを務める『田村淳一郎』は『裏切り、転落という絶望的な状況に陥ったにもかかわらず、逆境をものともせずに這い上がろうとする尚文のキャラクター性と作品が持つドラマ性。そしてラフタリアとフィーロという魅力的なキャラクターが登場し、ハーレムではなく家族に近い関係値を築いているところがファンに刺さったと考えています。私自身も、三人を温かく見守れる関係性がいいなと感じています』

ラフタリア役の『瀬戸麻沙美』は『仕事上、いろんな作品に関わらせていただいていますけど、ここまで周囲が敵だらけの作品というのは、なかなかないですね。でも、タイトルに「成り上がり」とあるので、これから尚文がどう見返していくのかとても楽しみになりました』

とコメントしました。

あらすじ（序盤のネタバレあり）

ごく普通の大学生であった『岩谷尚文』は四聖勇者の一人『盾の勇者』として、異世界に召喚されましたが、冤罪によって数々の迫害に遭います。

あまりの仕打ちに重度の人間不信に陥った尚文は、奴隷商人から亜人の少女『ラフタリア』を買い、２人で旅を始めました。

当初は主従関係でしかなかった２人ですが、旅の中で徐々に信頼し合う関係になっていきます。

ゲーム感覚で戦っては問題を起こす他の勇者をよそに、なんやかんや言いながら『波』によって被害を受ける民を助け、行商も行う尚文の評判は民草の中で上がっていきました。

しかし、盾の勇者を否定していた国教『三勇教』に襲われ、さらに定期的に魔物襲撃という厄災を起こす『波』の向こうから勇者と敵対する存在が現れます。

これらと相対した尚文は、『四聖勇者』に秘められた秘密、世界を破滅へと導くとされる『波』の実態と対峙するのであった。

作風・感想

異世界に召喚されるも裏切りにあい、地位も信用も奪われた主人公がどん底から這い上がる成り上がりファンタジーです。成り上がり系ですが、スタートはマイナスで這い上がる速度も地道になっています。

嫌でも力を合わせなければ、世界は救えない

主人公１人の力業で状況を打開することがほとんどできない『パワーバランス』。嫌な相手を手にかけて物語から無理やり退場させたり、関係を断ち切って逃げることができない『それぞれの立場や国家の問題』。そういう相手とは嫌でも話し合いをして共に行動しなければならないという『キャラクター同士の感情のぶつかり合い』が魅力です。

舞台となる異世界には、レベルやステータスの概念が存在しています。これは読書にとってわかりやすい指標であると同時に、どうしてそれが世界に存在しているのか、という謎に繋がっています。

魔物や魔法、多くの種族が登場するファンタジーな世界観ですが、種族間の軋轢によって一部の種族が奴隷として扱われていたり、魔物の襲撃や定期的に起こる『波』の被害が世界各地に刻まれているなど、生々しい描写も少なくないです。

冒頭から物語の裏側に関する伏線が散りばめられており¹、何も知らない尚文視点で回収していくことで、徐々に明らかになっていく深い世界観にどっぷり浸かることができます。

¹……『序盤で盾の勇者が冷遇されているのは明かされるが、理由や発端、なぜそれが国に根付いているのか』など

抱いた憎しみとどう向き合うか

人間関係にもスポットが当てられており、重度の人間不信に陥った尚文が、旅先で出会った人物たちと触れ合い、時に衝突することで変わっていきます。同時に迫害を受けたことで抱いた憎しみや怒りの感情との向き合い方も丁寧に表現されており、仲間との絆を育みながら心の奥底に負の感情を持つ尚文が、どういう行動を取るのか先が読めません。

世界観がシビアで、序盤はシリアスなシーンが多いですが、それ一辺倒というわけではなく、合間に一息つけるコミカルなシーンが挟まっているので読みやすいです。