『シリウスシンボリ(ウマ娘)』ストーリーネタバレ・終

の続き。

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育成ストーリー

ウマ娘としてのシリウスシンボリ

桁外れのパワーで地面を蹴っては、縦横無尽にコースを抉り、ライバルたちを蹂躙していくパワーの持ち主です。雨でやや重くなったコースでも、餓狼のような咆哮を上げながら堂々と走り切る姿は、観る者を惹き込む『私はここだ!』と言わんばかりの獰猛さに満ちています。

爆発的な闘気の持ち主ですが、闘争心の赴くままに暴走することはなく、高い自制心でレースの流れを冷静に分析します。周囲の評判に心を乱されず、他人に流されない。ほかでもない自分であり続けようと気高く振る舞い続けるウマ娘です。

後輩たちからは、『基本的に何でもできる』『最強のシリウス先輩』と言われています。

トレセン学園のベテラントレーナーからは『クラシック三冠制覇を狙える』と評され、選抜レース後は人垣ができるほどのスカウトを受けていました。

『無敗の6連勝で日本ダービー制覇』のシンボリルドルフを見てきたシンボリ家が、『シンボリルドルフに実力が劣るとは思わない』と言っており、評価は高いです。

走る以外に関しても、『トレーナーが下手に口出しできないほど完璧で隙のないトレーニングメニューを自作』『後輩たちに教官さながらの指導を行う』など、抜群の知識量を裏づける記憶力と応用力に優れています

その視野は広く、海外進出のために、早い段階からスポンサーを確保しようと動いていました。

トレーナーに対しても、『洋書のみが置かれている図書館』や『レース界の重鎮が来るパーティ』に連れて行くなど、海外進出するために必要な知識の獲得を促しています。『吊るし売りのスーツで私の隣に立つ気か?』と言いながら、スーツや靴を見立てるイベントもありました。

文武両道を地で行くウマ娘で、欠点らしい欠点と言えば、尊大な態度で誰にも従わないことです。従わないといっても、全ての意見を突っぱねるのではなく、良いと思った意見は積極的に取り入れます。考えなしに従うのが嫌なだけで、自分の中で取捨選択した結果、自分の考えよりまさっていると判断すれば拒否しません。

それは『従わせたいなら勝て』という単純な行動理念ですが、幼少期からシンボリ家の高度な教育を受けて、海外進出のために模索し続けているシリウスシンボリが相手です。簡単に行かないのは、火を見るよりも明らかでしょう。

目指すべきは世界

闘争心が高く、強気な対抗意識で誰が相手でも怯みません。『この国で生まれる全ての栄光は私が塗りつぶす』と言い切れる自信の持ち主で、一世代上のウマ娘『ミスターシービー、カツラギエース』ですら、自分が世界に羽ばたくための踏み台として見ています。

それは見下しているのではなく、『世界中にはシンボリルドルフみたいなのがごまんといる』と常に世界を見据えているからで、むしろ『海外は甘くない、足りていないのもハナからわかっている』など冷静です。

自身の勝利を信じて疑わない不遜な態度は、『レースは負けると思ったヤツから振り落とされる』という考えから来ています。

世界を目指すのは、狭い島国でふんぞり返ったって意味がないから。八大競争¹にも価値はあるが、決まり切った天井では行く末は知れていると考えています。

¹……重賞の中で特に格の高い伝統ある重賞競走の総称。現実ではグレード制(G1、G2、G3など)が導入されたことにより、あまり使われなくなった表現。

また日本のウマ娘界が、海外に遅れを取っているとわかりながらも踏み出せない²。自分の脚に枷をつけている状態に、『進むべき道と語るべき夢』を見いだせなかったのが大きいです。

²……あらゆる理由があるとはいえ、前例がなく、リスクに対してリターンが不明慮。そこに価値があると思われていないため。

前例がないなら切り拓く、枷があるなら引きちぎる。誰にも守られない代わりに、どこまでも駆けていく自由を得る。その先に、シリウスシンボリの目指す『世界』はあります。それを獲りさえすれば、世界最高峰のレースで勝てば、この世界の頂点で燦然と輝ける。誰もシリウスシンボリの実力を疑うことはない。

『わかりやすくて最高だな…ハハッ!』

落ちゆく誓い

シンボリルドルフは生ぬるい。彼女が掲げる理想全てのウマ娘を幸福にしたい』は夢物語、大層に美しい理想論とシンボリシリウスは言い切ります。

普段は冷静なシリウスシンボリが射るような視線で噛みつきますが、昔は今と違う関係でした。

幼い頃はシンボリルドルフと競い合い、『私のことは全て私が決める』という考えに至ったのも、『シンボリルドルフがいつも自分で考え選び取る姿を見ていた』ことが要因の1つです。

シンボリルドルフがいたからこそ、今のままでは足りないことがわかりました。あの背を超えれば、誰よりも輝く一等星になれる。それは目標であり、心からの尊敬でした。

当時のシンボリルドルフにとっても、シリウスシンボリは特別な存在です。昔は走る姿が獰猛で、底冷えする眼差しで出走者を見据え、完膚なきまでに叩きのめすことからトレーニングの併走相手にも事欠いていました。

そんなシンボリルドルフに対して、獣みたいな目がたまらない、噛みついて怯ませたくなる。『どうすればアンタみたいに速く走れる、もっと直すところを教えろ』と食らいついてくるのがシリウスシンボリでした。

お互いに高め合う関係が崩れたのは、シリウスシンボリが自分のトレーニングに打ち込み、トレセン学園入学までシンボリルドルフと顔を合わせなかった時です。

『私は君達を導く存在でありたいんだ』

かつて誰よりも尊敬していた存在の口から紡がれたのは、この世でもっとも嫌う言葉でした

手本となり、導き手となり、全てのウマ娘を幸福にしたい。シンボリルドルフは管理側に手を出して、無駄なモノを背負い込んだ。走ることだけに注力しなくなった。ツケが回らないはずがない。

だからシリウスシンボリは、二足の草鞋を選んだシンボリルドルフを決して認めません

目標だったのは過去。直接対決も価値がない。トゥインクル・シリーズでシンボリルドルフが残した戦績を上塗りするだけで、鎮座する王座の輝きはくすむ。出向いて叩きのめすのは時間の無駄だと言います。

『勝負は乞われてもごめん』

世界を目指す彼女にとって、シンボリルドルフはもう交わらない存在でした。

それでも、URAからシンボリルドルフの海外挑戦の帯同者をお願いされた時は、取り巻きが見てもわかるほど嬉しそうにしていました。

帯同者というポジションはいただけないが、下見ができるのは悪くない。何より、シンボリルドルフと海外で暴れまわれば、面白い景色が見れると内心は期待します。

デビュー前から計画していたトゥインクルシリーズの予定を急遽白紙に戻して、シリウスシンボリは海外遠征に備えましたが、シンボリルドルフの怪我で海外挑戦は中止という連絡が届きました。

『テメェ! 認めねぇなんて言わせねぇ。アンタの弱さが露呈したんだ!』

いらない業務を背負い込み、集中力を欠いた挙句の怪我。傲慢さが招いた惨事。二足の草鞋をはいて、ただ弱くなった

『アンタはトップの器じゃない。周りが認めても私は認めない。昔の方が、まだその才はあった。これは侮蔑だ』

余裕を失ったシリウスシンボリに、『シンボリルドルフの代わりに海外挑戦』という話が来ます。

行く、と口をついて出た言葉。シンボリルドルフが進むべき道だったものを先に塗りつぶす。全ての史上初は頂く。二人目になるシンボリルドルフに価値はない。

目的が変わっていました。世界で最も輝く存在になりたいから、シンボリルドルフの蹂躙に、元の夢を浸食する勢いで心が蝕まれていきます。

『堕としてやる。塗りつぶしてやる。私がアイツの全てを蹂躙してやる。他のことなんざ、どうでもいい』

いつもは鋭く前を見つめる瞳が薄暗い、星の輝きが黒い霧に包み込まれていく

夏のシリウス計画

『シンボリルドルフに囚われてはいけない』『君は君のために走るんだ』。いくら言葉を投げても、きっとシリウスシンボリには届かない。彼女は誰にも導かれず、支えられることもないから。

光が失われて、何も見えないなかで、シンボリルドルフという光を蹂躙しようと突き進む。そんな彼女を振り向かせたのは、『シリウスシンボリこそが最も輝くべき星なんだ!』と星を仰ぐように叫ぶ声でした。

振り向けば汚いノートが落ちていました。表紙には夏のシリウス計画と書かれています。中身はあちこち仮説が殴り書きされており、心理学までかじった、余裕の1つも見えない無様なものでした。

・シンボリルドルフとの直接対決を避けているのは、価値がないからではない。本当に価値がないと思っているなら、海外挑戦に期待はしていないはず。

・本当は元の関係に戻りたいと思っているにも関わらず、感情に蓋をしている。直接対決は、その蓋を取り除くことになる。

・特別な相手が変化した喪失感、寂寞感せきりょうかん、嫉妬。それは強く猛々しいシリウスシンボリに、あってはならないはずの泥のような感情。だから、戦うことは価値がないと思い込み。己を納得させて避けている。

・活躍に毒を吐いていたのは、ただ気に入らないのではなく、ある種のアラート。シンボリルドルフの躍進は、心を蝕むものだった。

『ありえない。そんなものが私の中にあってたまるか、幼く、醜悪で陳腐なものがあるワケねぇ』

変化に寂しさを感じてない、直面する恐怖も、元に戻りたいなんて陳腐な感情もあるわけない。ここにあるのは、弱くなったシンボリルドルフへの、怒りのみのはず。

確かめてやる。証明してやる、私に。何より、この心配性に

決別

シリウスシンボリは、己の正しさを示すために、シンボリルドルフと『有マ記念』で戦いました。

肺も脚も千切れても構わない、走れ、走れ、走れ。シンボリルドルフを越えて、全てを終わらせるために

怒号と共に加速する。炎のような闘志が渦を巻きます。そんなシリウスシンボリの熱に、シンボリルドルフは口角を上げました。そして、鬼火のように燃えた目で、シリウスシンボリを捕らえます。

『待て、アイツ、レース中に。一瞬、一瞬だが確かに、私を見た』

その目は確かに、シリウスシンボリにのみ向いていました。お互いに高め合いながら、ターフを駆け抜けた幼き日々のように

意図せず笑みが零れます。

『……なぜ、笑った。なぜ、見たことが、そんなに。ああ、なんだ。見て、ほしかったのか。昔のように、私を。寂しいどころじゃない。あーあ、くだらねぇな』

ふと、駆け抜けた青い道を振り返ります。眩しいターフでした。今のシンボリルドルフは、昔の何倍も強かったと認めます。決して荷を下ろさないから、そう決めたから、遠くへ行ける。遥か先にある理想のために、シンボリルドルフとして立つために。

『ずっとわかってた。もう、戻れはしない。アンタも、私も。せいぜいのたうち回りながら、全てのウマ娘のために輝き続けろ。シンボリルドルフ』

レース後、シリウスシンボリの口から迷いなく語られる未来のローテーションに、シンボリルドルフはいなかった

この空で、もっとも輝く星はシリウス。いずれ世界にその輝きを見せつけるために、これ以上の寄り道はいりません。

『あのだせぇ名前のノート、そうコケにできるもんじゃなかった。……もう心配するな』

多くは語りませんが、光は、確かに取り戻せました。

誓いを越えて

道を説くのは聖人の仕事。ついてくるのは構わない、けれど手足を取って導いてはやらない。それがシリウスシンボリのスタンスでしたが、海外挑戦に向けて日々を歩む中で、大きな変化が起きていました。

『私の始まりは、お前の始まり。私の夢は、お前の夢に続くもの。道を拓いてやる。私に続いて、必ず出てこい。私がお前らの道しるべになってやる

希望と未来を感じさせる、強く頼りがいのある開拓者として、足元も見えない暗闇に道を拓きます。最も輝く星を見上げて進めば、夢に繋がっている。シリウスの光が目印です

やり方を変えたのは、裏方へ回ると決めたシンボリルドルフも同様でした。

『頼みがある。君ともう1度、走りたい。海外へ行けば2年は帰らない。その前にどうか、走ってくれないか。裏方へ回る意気込み、この様だ。なじってくれてかまわない。しかし、私は今の君と、勝負がしたい。これを逃すことがどうしても、どうしても、我慢ならない』

冬の空さえ焼き焦がそうとする鋭い光に、我慢なんてできるわけがない。

『いいぜ、アンタの名声はいまだ健在。光が足りないと思っていたところだ。足場になれよ、シンボリルドルフ』

2人は再び『有マ記念』で戦います。

長い月日が流れていました。お互いに色々と変わった先で、背負うものも生まれました。しかし、旅路は長く、まだ終わっていません

私とアンタ、どちらが強いか! ここで一度白黒つけようぜ!

ターフをふたつの影が駆け抜けていきます。互いの熱を追いあうように、風を切って。

皇帝の目が、道を開けろと言わんばかりの気迫で、確かにギラリと鋭く光ります。

『ギラついてんじゃねぇよ、アンタは聖人「シンボリルドルフ」だろうが!』

その力強い光に、一片たりともくすむことはなく、青い一等星が輝きます

『年末のグランプリを制したのは、シリウスシンボリ!!』

『…………。……シリウス、おめでとう』

『……強くなっただろ。越えてやったよ。アンタを』

『ああ、そうだな。ありがとう、シリウス』

幼い頃から、シリウスシンボリはひときわ輝くものを持っていました。

レースへの才能、己を信じ続ける力、止むことのない熱。

恒星は、衛星とは異なり己自身で輝きを放ちます。たとえそこが前人未踏のバリの天空であっても。天狼星ならばきっと

決して離れるな

昔から言っていた。世界で最も輝く星になるって。全くぶれなかったか? いや、そいつはどうかな。

今思えば、随分なザマだ。テメエの目的も見失って、アイツに固執して、トレーナーの声に耳を貸す気すらなかった。

無様で滑稽で、脆弱で、私がトレーナーなら迷うことなく切ったろう。

それをよく見放さなかったもんだ。わからない。なぜあの時のアンタが、そうも大事に抱えられたのか。

ぶっ倒れてまで、なぜ必死になって守ろうと思えた? 愚直なんて言葉では、到底理解できない。

トレーナーなんてのはみんなそうなのか? 小さな可能性からも必死こいて庇って、てめえの苦労は度外して平気ぶる。親父と先生、いやそれ以上に。異常だ

隣にい続けりゃ酸いも甘いも見えただろう。何よりも燦然と輝く姿、導かれずにはいられない力強さ、まだ本気でそう言い切れるのか?

ああ。……。……そうかよ。やっぱりアンタは、異常だ。

一度しか言わねぇぞ。理想的なパピーの条件は3つある。

聞き分けが良いこと鼻が利くこと必ずついてくることだ

決して前にはいねぇ、隣に並んでいるワケでもない。が、振り向けば必ずそこにいる

これから先、海を越えての長い旅路が始まるが。アンタは、私の光になんざならなくていい。ただ、決して離れるな。今まで通り、何があってもだ。

……わかったな。

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